2月27、28日のJ1リーグ開幕節に、誰よりも胸を躍らせたのは手倉森誠監督かもしれない。リオ五輪に出場するU−23日本代表の指揮官にとって、収穫のある2日間だったはずだ。

 昨年のJ1リーグ開幕カードを振り返る。スタメンに名を連ねたリオ五輪世代は、遠藤航、大島僚太、岩波拓也ら11人だった。サブに名を連ねたのは14人だった。合計25人の選手が、所属クラブの開幕戦に絡んだ。

 今年は一気に増えた。スタメンで出場したのは18人で、ベンチ入りを含めると45人がピッチ上で開幕戦の空気に触れた。

 最終予選で主力を担った遠藤が、新天地の浦和でフル出場した。同じく所属先を変えたセンターバックの奈良竜樹は、川崎フロンターレの4バックを形成した。奈良とともにカタールで堅陣を築いた植田直通と岩波拓也も、昨年に続いて開幕スタメンを勝ち取っている。川崎Fの背番号10を背負う大島も、昨季の年間王者・広島を撃破した一員である。

 最終予選のメンバーだけではない。ケガでドーハ行きを断念したGK中村航輔は、レンタルバックした柏のゴールマウスに立った。J1に昇格したアビスパ福岡では、金森健志が2シャドーの一角を担った。その福岡をホームで退けたサガン鳥栖では、鎌田大地がトップ下でプレーした。敵地でガンバ大阪を下した鹿島の決勝点は、プロ2年目の鈴木優磨が途中出場から決勝弾をマークしている。

 J2ではファジアーノ岡山のふたりが、スタメンでピッチに立った。期限付き移籍を延長した矢島慎也は、1対1の同点に持ち込むゴールを決めた。鹿島から期限付き移籍した豊川雄太も、新天地での第一歩を記している。

 リオ五輪の出場権を獲得したことで、23歳以下の選手たちは本大会のメンバー入りという共通の目標を持つことができている。最終予選には参加できなかった選手たちを含めて、新しい競争が本格的に幕を開けた。

 日本サッカー協会の技術委員会と手倉森監督は、本大会でのオーバーエイジ(OA)活用を確認している。18人の登録メンバーにOAが最大3人加われば、23歳以下の選手は15人しかリオへ辿り着けない。GKを2人とすれば、フィールドプレーヤーは13人になる。相当に狭い門だ。

「本大会への競争が激しくなるほど、チーム全体がレベルアップする。最終予選のまえも、23人に絞るのは大変だった。今度は18人。もっともっと大変な作業になる。でも、自分が悩むのはいいこと」

 手倉森監督はこう話す。48歳の指揮官は、嬉しい悩みを抱えていくことになりそうだ。