今週の中山メーンには昨年の2冠馬ドゥラメンテら、有力馬が集結する予定だ。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」より、2月末のこの時期に、GI並みの豪華メンバーが揃う日本馬の充実ぶりについてお届けする。

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 中山記念はまだシーズン本番とはいえない時期のレースですが、今年は大河に注ぐ支流が合流するように、多くの魅力が集中しました。90回を数える伝統あるレースで賞金が高い(1着賞金6000万円)ことはもちろんですが、収得賞金が多くても、他の重賞と比べてさほど重い斤量を背負わないですむ点もいい。

 1800メートルのGIIというのは、マイラーにとっても2000メートル以上のGIを狙う馬でも使いやすい。そして中山の1800メートルは1600メートルほど枠順での有利不利はなく、4つのコーナーを曲がる器用さが要るものの、力勝負に持ち込めやすい。開幕週のフレッシュな馬場を走れることも好材料です。

 しかし、近年ここに有力馬が集まるようになった最大の理由は“大河”の存在、世界の競馬です。中山記念の先にはドバイが見えています。

 3月末、アラブ首長国連邦のドバイではGI5競走を含む8つの国際招待競走が行なわれます。距離もバラエティに富んでいるため、世界中の有力馬が集まり、どれも賞金が高いことでも知られています。ダート2000メートルで行なわれる「ドバイワールドカップ」にいたっては、1着賞金がなんと600万ドルです。

 この週は日本でもGI高松宮記念が行なわれますが、1200メートルのスプリント戦のため、マイル以上を主戦場にする有力古馬にとっては、ドバイは願ってもない舞台なのです。

 いまや、ドバイを抜きにして日本の競馬は考えられなくなっています。最終的には主催者から招待されなければ出られませんが、今年も8つのレースに計53頭が予備登録しました。中山記念に出走予定の馬も何頭かいます。

 ドバイといえば角居厩舎では2011年のヴィクトワールピサです。前年の有馬記念、続くこの年の中山記念を勝ち、ドバイWCを制覇(M・デムーロ騎乗)。日本調教馬の初勝利でした。トランセンド(藤田伸二騎乗)との叩き合いの末、日本馬のワン・ツーフィニッシュ。これにはシビれました。

 私はゴール付近の外ラチ沿いで見守っていました。ゴール後、並走するミルコと藤田が肩を叩き合っていた。陣営や日本のマスコミの歓喜はものすごかった。自分の管理馬の勝利というより、日本の馬が勝てたことが心底うれしかった。東日本大震災の直後でもあり、多くの感慨が押し寄せてきて、涙が止まりませんでした。

 そんなドバイを見すえた今年の中山記念に、角居舎はフルーキーとラストインパクトを出走させる予定です。フルーキーはタメがきいてパワーも切れもあり、昨年大きく成長しました。ラストインパクトはドバイにも予備登録しています。

 クラシックシーズンより一足早い、熱い闘いに期待してください。

●すみい・かつひこ:1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後14年で中央GI勝利数23は歴代2位、現役では1位。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。競馬の他、馬文化普及や障害者競馬などにも尽力している。主な管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイアなど。

※週刊ポスト2016年3月4日号