by Stephen Poff

本などの文章を読む際に、声に出さずに黙読していても頭の中で文章を読み上げる「声」が聞こえる、という人が8割以上を占めていることが調査から明らかになりました。「読書中の内なる声」については、これまでほとんど研究が行われていない分野であり、幻聴障害の研究にも役立つのではないかと見られています。

Inner reading voices: An overlooked form of inner speech - Psychosis - Volume 8, Issue 1

http://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/17522439.2015.1028972

BPS Research Digest: You hear a voice in your head when you're reading, right?

http://digest.bps.org.uk/2016/02/you-hear-voice-in-your-head-when-youre.html



「読書中に文章を読み上げる声が頭の中で聞こえるかどうか」の調査には、英語圏最大のQ&Aサイト「Yahoo Answers」に投稿された質問が利用されました。調査を行ったニューヨーク大学のRuvanee Vilhaue氏によれば、Yahoo Answersには読書中に聞こえる声についての質問が2006年から2014年の間に24件投稿されていて、合計で136の回答が寄せられていたとのこと。

Vilhaue氏がすべての質問と回答を分析したところ、82.5%のユーザーが「読書中に内なる声が聞こえる」と主張していることが判明しました。10.6%のユーザーは「内なる声は聞こえない」と反論していて、声が聞こえると回答したユーザーのうち13%は、本の内容にどれだけ興味を持っているかなどの要因によって声が聞こえる時と聞こえない時があると回答していたそうです。



by Erik Schepers

また、Yahoo Answersでは「読書中の内なる声の声色が一定かどうか」も議論の的となっていて、「さまざまな声色がある」という人は、本の登場人物や、手紙やメールの送信者によって声色が変わると回答。「声色は毎回同じ」と答えたユーザーは、自分の声と似た声色で、ピッチやトーンが少し異なると回答していたとのこと。普段から物事を考えるときに頭の中で聞こえる声と、読書中に聞こえる声が、まったく同じだと回答する人もいたそうです。

さらには、「声色を自在に操ることができる」というユーザーや、「内なる声で気が散ったり、時には声をおそろしく感じることもある」と投稿しているユーザーもいたとのこと。Vilhauer氏は、読書中や思考中の内なる声を正常に識別できない状態が「幻聴症状」であると推測して、心理学や心理学療法を扱う医学雑誌「Psychosis」に論文を寄稿しています。



by Janine

Vilhauer氏によれば、読書中の内なる声に関する研究は、これまでほとんど行われていなかったとのこと。理由としては「内なる声が聞こえる人と聞こえない人が、それぞれ自分たちの状態が当たり前だと考えて過ごしてきたためではないか」とVilhauer氏は推測しています。なお、イギリスの心理学研究団体British Psychological Societyは、「今回の論文で行われた調査は、慣例的な調査方法に従っていないため、8割以上の人が読書中に内なる声を聞いているという結論は確証が得られない」と主張しています。

なお、発達心理学の分野では、頭の中で自問自答して物事を抽象的に考えられるようになるのが9〜10歳頃と言われていますが、幼少期の自由な遊びや会話が抽象的な思考の基礎となると考えられています。幼少期の経験不足が原因で9〜10歳頃に突然学習が進みにくくなる現象が「9歳の峠」や「10歳の壁」と呼ばれており、特に聴覚障害児は10歳以降の学習が困難になる、と以下の書籍に詳しく記されています。

子どもの「10歳の壁」とは何か? 乗りこえるための発達心理学 (光文社新書) | 渡辺弥生 | 本 | Amazon.co.jp

http://www.amazon.co.jp/dp/433403618X/