赤子の衣装デザイン(写真左) (C)2015『蜜のあわれ』製作委員会

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 二階堂ふみと大杉漣の共演で、大正期に活躍した詩人・小説家の室生犀星が晩年に発表した小説を映画化した「蜜のあわれ」の衣装を、auの「三太郎」シリーズのCMなどで知られる衣装デザイナーの澤田石和寛氏が手がけている。過去には「十三人の刺客」(2010)、「るろうに剣心」シリーズ(12〜14)、「信長協奏曲(ノブナガコンツェルト)」(16)といった時代劇の衣装を多く手がけてきた澤田石氏が、本作の衣装に込めた思いを語った。

 変幻自在の金魚の姿をもつ少女・赤子(二階堂)と老作家(大杉)の奇妙な関係を幻想的なタッチで描く本作では、金魚を表現した赤色の衣装が印象的だが、澤田石氏は「赤子の成長が衣装で表現されている」と話す。赤子のドレスは13種類もの生地で製作されており、物語の展開に合わせて変化していくという。「(時間の経過に合わせて)袖が伸び、スカートの丈が長くなり、次第に“赤”の面積が増え、さらに朱赤色のシルクオーガンジーから赤黒い2色糸のシフォンへ、素材の変化に合わせて赤がどんどんと深くなっていくのです」。作家の衣装に関しても、時間の経過に合わせて色を濃くしつつ、石井岳龍監督の「死の色は黒」という言葉をキーに、灰白色から漆黒まで約12色の着物を製作するなど色彩表現にとことんこだわった。

 赤子の衣装では、金魚をイメージさせるようなフォルムを生み出すのに苦心した。実際に金魚の形をパターンに起こすなど研究を重ね、衣装に反映していったという。「(衣装製作者と話し合い)裾を軽くするなど金魚の尾ひれの動きをイメージした、柔らかいドレスにしてもらっています。透ける素材のドレスを重ねることで、衣装の輪郭に金魚の尾ひれのような印象を加えることもデザインの1つです。男性の思考から生まれた女性の“なまめかしさと純情”を赤い色をつかって表現することができたと思います」。

 澤田石氏はまた、「世界観の中心に立って、赤子を体現してくれた」と衣装と二階堂の親和性についても自信を見せる。二階堂がアイデアを出すこともあったそうで「衣装的には『ポックリ(下駄)がいいと思う』とアイデアが出てきました。彼女はこちらの思い描いたイメージに乗り、その上でもっと個性を強くするアイデアを出してくれる素敵な役者です」と称賛した。

 なお、映画の公開を前に、3月1日から東京・渋谷ヒカリエで本作の展示会が開催(3月13日まで)。澤田石氏が手がけた衣装も展示される。

 「蜜のあわれ」は、真木よう子、韓英恵、上田耕一、渋川清彦、高良健吾、永瀬正敏らが脇を固める。4月1日から全国公開。