by kdingo

イギリスは路上駐車の取り締まりが非常に厳しく、違反キップがなんと4.6秒に1回切られているという調査結果もあるほどです。しかし、違反キップ全体の4分の1は発行時に何らかの問題があるとされていて、異議申し立てを申請した人のうち、39%が認められて罰金取り消しに成功しているそうです。そこで、誰でも簡単に駐車違反キップの異議申し立てを行える無料サービスを、19歳のプログラマーが作成・公開しています。

Teenager creates website allowing motorists to fight parking tickets in just minutes | UK | News | The Independent

http://www.independent.co.uk/news/uk/parking-tickets-teenager-creates-website-allowing-motorist-to-them-in-minutes-10484200.html

Joshua Browder's Bot for parking tickets - Tech Insider

http://www.techinsider.io/joshua-browder-bot-for-parking-tickets-2016-2



イギリス国内で駐車違反キップを切られた際、異議申し立てを行うには、弁護士を雇って申請書類を作成する必要がありますが、駐車違反の罰金を支払うよりも高額な依頼料がかかることがあります。違反内容にもよりますが、1回の申し立てでおよそ400ドル〜900ドル(約4万5000円〜10万円)の弁護士依頼料がかかるとのこと。

そこでイギリス人のプログラマーのJoshua Browderさんが開発したのが、駐車違反の異議申し立て請願書を作成する無料ツールの「DoNotPay」です。免許を取りたての頃に、ロンドン市内で立て続けに30枚も違反キップを切られたことからDoNotPayの開発を始めたとのこと。

DoNotPay - get free legal help in under 30 seconds.

http://www.donotpay.co.uk/signup.php



DoNotPayにログインすると、チャットウィンドウが起動して、「あなたは違反キップを切られた本人ですか?」「あなたが駐車していたのは、駐車禁止の標識が見えづらい場所でしたか?」というように、駐車違反に関する質問に答えていきます。最後に違反取り消しの申請理由として、12種類の文書の中から1つを選択すれば、約1分で電子嘆願書が自動的に完成して、議会や役所などにメールで送られるシステムになっています。万が一プログラムにバグが生じた場合は、Browderさんに直接連絡を取れるとのこと。



記事作成時点で公開されているDoNotPayはベータ版ですが、プログラムを使う人が増えるにつれてプログラムが自己学習していくとのことで、2016年春には完全版をリリース予定だそうです。なお、Browderさんによれば、2015年にサービス開始してから、実に300万ドル(約3億3875万円)分の駐車違反の罰金取り消しに成功しているとのこと。



by Daniel Guy

弁護士自身が「10年以内に弁護士業が人工知能に取って代わられる」と考えているように、法律を扱う単純なタスクであれば、既にプログラムを書いて自動化することが可能な段階にまで到達しています。Browderさん以外にも、スタートアップのAcadmxが裁判用の弁論趣意書作成プログラムを開発していたり、法務サービスを提供するLex Machinaは過去の判例データから未来の裁判結果を予測するプログラムを制作していたりと、弁護士業の自動化が進められています。

Browderさんの作ったプログラムは、駐車違反だけでなく、飛行機が遅延・運航中止した際の訴訟や、イギリスの支払い保障保険(Payment Protection Insurance、PPI)の訴訟にも活用できる見込み。Browderさんは他にも、シリア難民保護施設の法的問題を扱うプログラムを開発中。アラビア語の文書をプログラムに読み込ませて、出力する文書は英語に翻訳する必要があるため、言語の壁が最大の問題になっているとのこと。Browderさんは、「僕はまだ19歳ですが、DoNotPayのコードはすべて1人で作りました。今後は、駐車違反の申請取り消しには弁護士を雇う必要がなくなると思います。今はまだ最高裁の裁判でロボットが裁判員の前で討論を繰り広げるようなことはないと思いますが、いずれは人工知能技術が進歩して、単純なタスクを行う弁護士は減っていくでしょう」とコメントしています。