今や当代屈指のCFの一人となったレバンドフスキ。ビッグネーム獲得を補強戦略の柱に据えるR・マドリーのペレス会長が今夏の引き抜きを画策している。(C)Getty Images

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 ロベルト・レバンドフスキ自身はバイエルンに不満があるわけではない。しかし、レアル・マドリーが本気で獲得に乗り出してくれば話は違ってくる。
 
 年俸を引き上げてまで慰留するのはバイエルンのやり方ではなく、十分な移籍金が得られたうえで本人が退団を望むなら、無理に引き留めないだろう。

 R・マドリーのフロレンティーノ・ペレス会長がレバンドフスキの獲得を強く望んでいるのは事実だ。だが、これから先の数か月で心変わりする可能性は大いにある。彼の移り気は誰もが知るとおりで、ジネディーヌ・ジダンがこのまま監督の座に留まるかどうかも分からない。

 ただ、現時点ではジダンの仕事ぶりに満足しているようだ。ガレス・ベイルとクリスチアーノ・ロナウドを常にピッチに立たせるなど、選手起用に対する要求を黙って聞き入れてくれるからだ。ベニテスをクビにしたのは、お気に入りのベイルを途中交代させたり、采配が気に入らなかったというのがもっぱらの噂である。
 
 もしレバンドフスキがR・マドリーに移籍すれば、バイエルンがその後釜として誰を連れてくるかにも注目だ。その有力な候補のひとりが、パリ・サンジェルマンのエディンソン・カバーニ。来シーズンからバイエルンを率いるカルロ・アンチェロッティが高く評価している。他にはR・マドリーのカリム・ベンゼマナポリのゴンサロ・イグアインもターゲットになるだろう。
 
 いずれにせよ、ここで名前を挙げた4人が、今夏のメルカートを賑わす主役となるのは、間違いない。

移籍専門記者によるR・マドリーの「強化部門」解説


 R・マドリーがレバンドフスキを獲得すれば、入れ替わりで去るチームを可能性が高い。
 
 現在のようにコンスタントに出場機会を確保するのは難しくなるはずで、もしエースストライカーとして迎えてくれるメガクラブがあれば、心が動くのは当然だろう。
 
 マテュー・ヴァルビュエナへの恐喝関与疑惑という個人的な問題を抱えてもいるだけに、これを機に環境を変えて心機一転という心境になったとしても、おかしくはない。
 
 獲得に乗り出しそうなのはユベントス。彼らは他でもない、R・マドリーにモラタを買い戻される可能性が高く(買い戻し後、モラタはR・マドリーから他クラブに転売される可能性もある)、今夏はワールドクラスのCFの確保を目指している。
 
 ユーベの第1ターゲットはカバーニだが、経済的な理由から獲得は容易ではない。ベンゼマは絶対的なクオリティーでもプレースタイルの面でも、モラタの申し分のない代替候補だ。

 カバーニは今夏にパリを去る可能性が非常に高い。少なくとも、本人が移籍を強く望んでいるのは間違いない。
 
 起用法(ズラタン・イブラヒモビッチがCFに君臨するためウイングが主戦場)から、チーム内での立場、年俸などの待遇面に至るまでのすべてに不満を持ち、クラブとの信頼関係はすでに損なわれている状態だ。代理人は昨夏から移籍先を探し始め、複数のクラブとコンタクトを取っている。
 
 もっとも熱心なのはユーベで、数か月前から可能性を探って話し合いを進めている。ただし、楽観できる状況ではない。カバーニ側が最低条件として提示した年俸800〜1000万ユーロ(約11億2000万〜約14億円)はユーベには荷が重い。
 
 もし資金力で大きく上回るプレミアリーグ勢、例えばマンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、アーセナルが本気を出せば、とても太刀打ちできない。ユーベもその点は自覚している。
 
 カバーニを以前から高く買っているのがジョゼ・モウリーニョで、いまやほぼ確実になったマンチェスター・U行きが正式に決定すれば、補強リストの上位にその名が挙がるはずだ。
 
 チェルシーは次期監督の人選次第。有力な候補のディエゴ・シメオネ(現アトレティコ・マドリー監督)、アントニオ・コンテ(現イタリア代表監督)、マッシミリアーノ・アッレグリ(現ユーベ監督)はいずれも、過去にカバーニの獲得をクラブに要求したことがある。
 
 マンチェスター・Uとチェルシーに比べると、アーセナルが争奪戦に本格参戦する可能性は低い。高額な移籍金や年俸、さらには年齢がネックになるからだ。
 
 その他で考えられるのは、前述した通りレバンドフスキの去就が不透明なバイエルンくらいだろう。

 ナポリはイグアインとの契約に9400万ユーロ(約132億円)という高額の違約金を設定している。これはどのクラブにとってもおいそれと支払える額ではない。その意味では、イグアインが自分の意思でナポリを出るのは簡単ではないように思える。
 
 だが、注意すべき点は、FIFAの移籍規定17条(契約から3年、満28歳以上の選手は、FIFA調停委員会が定める違約金を支払うことによって一方的に契約を破棄できる)だ。イグアインはこの夏、これを行使する権利を得る。
 
 イグアインがクラブと対立してまで我を通すとは思えないが、現在の年俸(550万ユーロ=約7億7000万円)を大きく上回るオファーが舞い込めば、なにが起こるか分からない。
 
 実際に彼の兄弟(兄のニコラス・イグアインが代理人)や弁護士など周辺の人びとが、17条を行使した場合の違約金はどのくらいの水準になるかをFIFAに問い合わせているという情報が、私のもとに入ってきている。
 
 例えば、仮に違約金が3500万ユーロ(約49億円)と算出されたとしよう。この数字を手にしたイグアイン側がナポリに対して、チェルシーやマンチェスター・U、バイエルンなどからのオファーを引き出した上で、「もし17条を行使したら3500万ユーロで移籍ができる。しかし、そうはしたくない。違約金の9400万ユーロでは高過ぎるから、6000万ユーロ(約84億円)で手を打とうじゃないか」と持ちかけるのは、十分にあり得るシナリオだ。
 
 もちろんすべてはまだ可能性の域を出ない話だし、ナポリの立場も今シーズンの結末によって大きく変わってくるだろう。もしスクデット(セリエA優勝)を勝ち取り、来シーズンのチャンピオンズ・リーグ出場権を得れば、イグアイン自身が「もう1年はナポリで」と決断するかもしれない。
 
 しかし、ナポリがもし今後大きく崩れてCLプレーオフ(セリエA3位)やヨーロッパリーグ(セリエA4〜5位)に回りでもすれば、状況は違ってくる。ナポリは6000万ユーロ級のオファーを受け入れざるを得なくなるかもしれない。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2016.03.03号より加筆・修正。
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、移籍マーケットの専門記者という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。