「人々にたらい回しにされて死亡」と伝えられたものの…(出典::http://metro.co.uk)

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アルゼンチンの海岸で、イルカの赤ちゃんが人間のエゴによるストレスおよび脱水症のために死亡というニュースがここ1〜2日ほどで世界に広まっていた。海水浴をしていた人が偶然にも捕獲し、イルカと2ショットを撮りたいという人が押し寄せたための悲劇と報じられたが、どうやらイルカは捕獲される前に死んでいた可能性が高いという。

本当に小さなイルカの赤ちゃんが不幸な死を遂げたのは、ブエノスアイレス州のサンタ・テレシータ(Santa Teresita)。多くの観光客が訪れて海水浴を楽しむ南大西洋に面したビーチで、その日も大変な賑わいであった中、一般人が1頭の赤ちゃんイルカを捕獲。その周囲には一気にカメラや携帯電話を手にした人々が群がり、イルカをおもちゃのように次から次へとパスしては2ショットだ3ショットだと撮影に大忙し。そのうちに小さなイルカの体内では脱水が進み、ついに息絶えてしまったというのが報道の内容であった。

現場の写真をメディアに提供したHernan Coriaさんも、「イルカが元気を失ってもなお彼らの撮影熱はおさまりませんでした。死んだとわかったのか、人々はその亡骸を砂浜に放置して去っていきました」と添えており、この一件に関して動物愛護団体PETA(People for the Ethical Treatment of Animals)も怒りの声明を発表。アルゼンチンの野生動物保護団体「Fundación Vida Silvestre Argentina」は、「Franciscanaという異名を持つこのラプラタカワイルカアルゼンチン、ウルグアイ、ブラジルなどに3万頭ほど棲息するのみで非常に脆弱です」と説明していた。

人間のエゴがむき出しの残虐でやるせない事件だと誰もが憤りを感じたこの話題。しかしここにきて英メディア『metro.co.uk』が、「海水浴をしていたこの人たちが群がっているのはイルカの“死骸”。誰が殺したかのか真犯人は不明」と報道。死骸が浜辺に放置されたのも、そうした場合に指示を出すライフセーバーが現場に1人としていなかったからではないかと伝えている。

シャチやサメによる捕食を恐れ、タコ、イカ、エビなど海底に棲息する生物を食べているといわれるラプラタカワイルカ。水圧に抵抗するためにイルカはそもそも皮下脂肪が厚く、体表面には水をはじく油脂が分泌されるが、「ラプラタカワイルカではそれが特に顕著です。そのため温暖な環境ではすぐに脱水症を起こして死んでしまいます」と専門家。つまり人間が海水浴をするような浅瀬を漂っていた時点で、その赤ちゃんイルカは生命力を失っていた可能性が高いという。油の漂流やひどい損傷など死因の特定が必要であれば解剖が行われるが、座礁に関しては自然死として扱われるケースも非常に多い。

出典:http://metro.co.uk
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)