2016年クラシック候補たち
第2回:スマートオーディン

 2000年代に数多くの名馬を育て上げ、一躍"時代の寵児"となった調教師がいる。栗東トレセン(滋賀県)の松田国英調教師である。

 2001年、管理馬のクロフネがNHKマイルC(東京・芝1600m)を制して初のGIタイトルを手にすると、同馬がその後、同年のジャパンカップダート(東京・ダート2100m)も圧勝。同じ馬で、芝、ダートのGIを制覇するという快挙を遂げた。

 そして翌2002年には、競馬界最高峰の栄冠・日本ダービー(東京・芝2400m)をタニノギムレットで獲得。さらに2004年には、キングカメハメハでNHKマイルCと日本ダービーの"変則二冠"を達成するという離れ業を演じた。

 その後も、GI4勝の名牝ダイワスカーレット(2006年〜2008年)や、2010年のNHKマイルCを勝ったダノンシャンティなど、その時代を代表する名馬たちを次々に送り出してきた。

 その松田師が、今年大きな期待をかける3歳馬がいる。スマートオーディン(牡3歳/父ダノンシャンティ)である。

 かつて松田師が手がけた父を持つ同馬は、昨年9月にデビュー。新馬勝ちを決めると、2戦目のオープン特別で2着、3戦目には重賞制覇を果たした。

 際立っていたのは、その3戦目の重賞・東京スポーツ杯2歳S(2015年11月23日/東京・芝1800m)での走り。例年どおり、早期デビューした素質馬が集う中、後方待機から直線で豪快な差し切り勝ちを収めたのだ。ラスト3ハロンは、32秒9という時計をマーク。驚異的な末脚を披露して、一気にクラシック候補に名乗りを挙げた。

 同レース後、スマートオーディンは放牧に出されることなく、そのまま松田厩舎で調教が続けられている。そしてその調教メニューにこそ、この馬に対する松田師の期待が込められているという。関西競馬専門紙のトラックマンが語る。

「東スポ杯2歳Sのあとも、スマートオーディンは坂路調教を週に2本、コンスタントにこなしています。松田先生は、『この時期の3歳馬に、これだけのハードトレーニングを課すのは異例』と語っています。過去に同様のメニューを課したのは、キングカメハメハやダノンシャンティなど、名馬となった一部の馬だけ。

 つまり、松田先生はそれらと並ぶほどの期待を、スマートオーディンに対して持っているということです。もちろん、それらの馬たちは故障に泣いたこともあるので、スマートオーディンの調教は、その経験を踏まえて、緩急を調整しながら慎重にやっているようです」

 スマートオーディンの次走の舞台として予定されているのは、GIII共同通信杯(2月14日/東京・芝1800m)。早くもそこで、トレーニングの成果が見られるかもしれない。先述のトラックマンが続ける。

「前走の東スポ杯2歳Sに出たときは、馬体重が482kgでした。それが今では、504kgほどあるそうです。それについて、『トレーニングが身になって、パワーアップしてきた』と松田先生。スマートオーディンの成長に、かなりの手応えを感じているようです。まだ精神的に幼い部分もあるみたいですが、それが解消されれば、より強さを増していくのではないでしょうか」

 なお、現在のところ、共同通信杯のあとのスケジュールは未定。年明け初戦に中山ではなく、前走に続いて東京のレースを使うこともあって、「おそらくクラシック第1弾の皐月賞(4月17日/中山・芝2000m)はパスして、NHKマイルCから日本ダービーへと向かうのではないか」と、前出のトラックマンは予測する。

 NHKマイルCから日本ダービーという道のりは、まさしく松田厩舎の名馬たちが歩んできた"マツクニ・ローテ"。はたしてスマートオーディンは、その足跡をたどって輝きを放つことができるのか。まずは、目前の共同通信杯のレースぶりに注目である。

河合力●文 text by Kawai Chikara