U−23日本代表はアジア最終予選で3枠しかないリオデジャネイロ五輪の出場権を獲得したが、彼らは本当によく頑張ってくれた。

 大会前は、1996年から続く五輪連続出場が途絶えるのでは、と不安視する向きもあったが、そんな見方を覆しての優勝。最高の結果を残した。グループリーグ3試合、決勝トーナメント3試合を通じて、どの試合でもU-23日本代表が走り負けなかったことが結果につながったといえる。

 さらに、選手たちが開き直ったことも大きいだろう。大会前の五輪出場権を危ぶむ声は、選手たちにも届いていたはずだ。しかし、グループリーグ初戦の北朝鮮戦で、薄氷を踏む思いを何度も味わいながらも勝利をつかんだ。

 この年代の選手たちは、短期間で急激に成長することがあるが、今回の大会がまさにそれだったように感じる。

 リオ世代の選手たちは、「谷間世代」と言われているが、過去の五輪世代と比べて特別劣っているわけではない。彼らが「谷間」と言われているのは、過去にU−20W杯などの国際大会に出場できなかったことや、Jリーグでレギュラーを獲得している選手が少ないことが理由にあるだろう。

 しかし、「プラチナ世代」と呼ばれる宇佐美貴史や清武弘嗣らロンドン五輪世代も、オリンピック出場を決めた時点では多くの選手が各クラブでベンチを温める存在だった。それがオリンピックイヤーを機に、大きく成長していった。リオ世代も高いポテンシャルを秘めている選手が多いだけに、今シーズンその才能を開花させて、「谷間」という評価を吹き飛ばしてもらいたい。

 また、このアジア最終予選を戦ったメンバーで、2018年のW杯ロシア大会に向けた日本代表候補としてもっとも可能性を感じたのは、センターバック(CB)の岩波拓也(神戸)と植田直通(鹿島)だ。

 両選手ともに身長は186cmあり、今予選ではイランやイラクといったフィジカルを武器にする相手にも空中戦やポジション取りで競り負けていなかった。もちろん、まだまだ足りない部分もあるが、CBというポジションは、日本にとってさらなる強化が必要と長年言われ続けているだけに、ふたりにはリオの舞台で経験を積み、日本代表へと駆け上がることを期待したい。

 攻撃陣で目についたのは、スイスのヤングボーイズでプレーする久保裕也だ。この予選で見せたプレーならば、日本代表のピッチに立っても不思議ではなかった。シュートやポストプレーなどの攻撃面だけではなく、粘り強いチェイシングで守備を助ける献身性も見せてくれた。よりレベルの高いリーグにステップアップして大きく成長してほしいところだ。

 浅野拓磨(広島)は、昨年の東アジアカップで日本代表として3試合に出場したが、W杯ロシア大会の出場権をかける今年のアジア予選でも戦力になると思わせるだけの力を見せてくれた。

 浅野はスピードが持ち味の選手だが、その武器をゴールを奪うために使えるようになったことが大きい。そのため、カウンター狙いの展開以外でも起用できる。なにより、シュートセンスが抜群だ。決勝の韓国戦で決めた同点弾は、相手GKのポジショニングや構えは万全だったが、少し浮かしたシュートを打つことでその守備を打ち破った。

 シュートを浮かすと、ゴールマウスを外す確率が増すので転がして打ちたくなるものだが、それはGKも読んでいる。そのため、GKの顔の横あたりの肩口を抜くイメージで浮かすと決まりやすいのだが、それをあの大舞台でできるあたりに、浅野の非凡さが表れていた。

 このほか、久保とともに、海外組として期待された南野拓実(ザルツブルグ)は、すでにA代表入りも果たし、その才能は疑いようもない選手だが、今回は周りに合わせようと意識しすぎたのかもしれない。もっと「自分らしさ」を出しながら、チームを牽引できるようになってほしい。

 もちろん、キャプテンの遠藤航(浦和)らほかの選手たちもさらなる成長が期待できる。日本人選手は22、23歳頃から飛躍的に伸びる可能性が高いからだ。

 日本サッカーにとってオリンピックは「国際経験を積む」という意味で重要な大会ではあるが、あくまでも通過点だ。最終目標は日本代表がワールドカップで勝つこと。だからこそ、オリンピックの舞台に立つことは最終目的地ではなく、「リオ経由ロシア行き」を目標に、日本代表のレギュラーを狙うくらいの気持ちで、2月下旬から始まるJリーグでアピールしてもらいたい。

福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro