塚本晋也監督作「野火」 (C)2014 SHINYA TSUKAMOTO / KAIJYU THEATER

写真拡大

 塚本晋也監督作「野火」がブルーレイ&DVD化され、5月12日に発売される。昨年7月の劇場公開以来ロングランヒットを飛ばし、観客動員7万人を突破。今も全国の劇場で舞台挨拶を行っている塚本監督が、思いを明かした。

 大岡昇平氏の同名小説を原作に、戦場の極限状態で追い詰められていく兵士の姿を生々しくあぶり出す。「(映画で描いた出来事は)普通にあったんです。それがなかったことになる世の中になってしまっているけれど、戦争ではこういうことが起きてしまうということは絶対に残さないといけない。今後も終戦記念日に上映したり、ブルーレイやDVDを出すことで(映画館がない地域でも)見ることができる。とにかく見てもらうことが大事」と熱を込めた。

 高校生のころから熱望していた原作の映画化に、「社会的なものや思想を入れるつもりはなく、とにかく(自分が)大岡昇平の素晴らしい小説で追体験したことをお客さんにも追体験してほしい」と挑んだ。「ただ、戦争というものが絶対に嫌だという思いは強くある。(映画を見て)どう考えるかはみなさんの自由」と真摯な眼差しをのぞかせる。

 特典として、企画スタート時から戦争体験者へのインタビュー、フィリピンロケの模様などを焼く1時間に収めた塚本監督監修のドキュメンタリー映像が収録される。「インタビューに答える話をベースにしているんですが、それだけで3時間近くあった」と本編に劣らぬ力の入れようで、「全国行脚で話したことを網羅した感じで、きっちり構築したドキュメンタリーにしようと思っています。まず映画を見て浴びてもらってから、裏付けのように見てもらえれば」と語る。

 これまで「バーチャルリアリティ」と向き合ってきた塚本監督。「現実か夢か曖昧になる『マトリックス』のようなテクノロジーの都市の中で、人間性を取り戻すためにあがく人たちが暴力的な表現で覚醒する様子を描いてきました。目の前に暴力的なものがない無菌室状態でのファンタジーとしての暴力でしたが、『野火』は生々しく娯楽的でない暴力として描かなきゃいけないなと。ただ、いつかは都市の外側にある現実に行きたいと思っていたので、入り口は全然違いますが別ものというよりついに新しい現実を見た、違う一歩を踏み出したという気持ちです」。

 そして都市を抜け、「フィリピンの大自然とちっぽけな人間の愚かしい行いのコントラスト」を浮き彫りにした。「昔は日本版『地獄の黙示録』を作れるようキャリアを成長させようと思っていた」と「地獄の黙示録」の影響の大きさとともに、「プラトーン」「ディア・ハンター」などの戦争映画も挙げる。一方で、主役が決まらないなか実写映画ではなくアニメ化も検討していたそうで、「絵だったら紙の上で縦横無尽に凝れば良くて、主人公が有名無名も関係ない。でも、半年くらい考えていて、最後にアニメではないなと。とにかく『野火』を作ることが大事だと思って作りました」と本作が完成した。

 塚本監督は、2011年にベネチア大学先付けとして初のアニメ作品を発表しており、「中学生の頃に映画製作のモチベーションと同じくらい、アニメを作りたいという思いがありました」。「あしたのジョー」「巨人の星」といったテレビアニメ、ディズニー「蒸気船ウィリー」などを自らのアニメ体験のスタートだと振り返り、「線が動くものがアニメそもそもの原点というか、初期衝動的なものがムズムズします。絵が動くという実感があって」。今もアニメ作りへの思いを燃やしており、「今は素晴らしいアニメがたくさんあるので、自分はアニメではない方法でアニメ的なことをやるのが役割かもしれないともどこかで思っているけれど、どこかでアニメーションはやりたい」と話した。

 「野火」のブルーレイ&DVDは5月12日に発売。ブルーレイは4700円(税別)、DVDは3800円(税別)。