2016年クラシック候補たち
第1回:メジャーエンブレム

 若駒たちが大目標に据える、3歳春のクラシック。牝馬にとっては、GI桜花賞(4月10日/阪神・芝1600m)とGIオークス(5月22日/東京・芝2400m)が、決戦の舞台となる。その3歳牝馬戦線では今年、すでに1頭の馬が断然の有力候補となりつつある。

 昨年末のGI阪神ジュベナイルフィリーズ(2015年12月13日/阪神・芝1600m)を制した、メジャーエンブレム(牝3歳/父ダイワメジャー)である。

 昨年6月にデビューした彼女は、新馬、500万下の特別戦と2連勝。いずれも先行して抜け出す盤石のレース運びで完勝した。

 そして3戦目は、近年牝馬クラシックとの関わりが深いGIIIアルテミスS(2015年10月31日/東京・芝1600m)に挑んだ。同レースでは1番人気に推されたものの、道中かかって逃げる形になってしまい、2着と惜敗。初黒星を喫した。それでも、続く阪神JFでは、好スタートからしっかりと2番手に控える競馬で快勝。2着以下をまったく寄せ付けないレースぶりで、同世代牝馬の中で頭ひとつ抜けた存在となった。

 メジャーエンブレムを管理するのは、美浦トレセン(茨城県)の田村康仁厩舎。同馬の順風満帆な道のりは、管理するスタッフにとって"期待どおり"だったようだ。関東競馬専門紙のトラックマンが語る。

「もともとメジャーエンブレムの乗り味は抜群だったそうで、厩舎スタッフの間ではデビュー前からかなりの評判でした。2戦目までは、『追い切りをやればやるほど速い時計が出てしまうので、最初のうちはセーブしていた』とも聞いています。それであっさり2連勝ですからね、恐れ入ります。

 田村厩舎にはメジャーエンブレムの兄たちもいるのですが、彼らは気性が荒く、調教・管理するにも結構手を焼いているそうです。それに比べてメジャーエンブレムは、『おとなしくて扱いやすい』とのこと。こうした精神面も、強さに通じているのでしょう」

 彼女の従順さを示したのが、まさしく阪神JFで見せた折り合い面の成長だ。アルテミスSで初の敗戦を喫したあと、他馬の後ろで我慢させる練習を取り入れたという。その結果、大一番となる阪神JFでは道中かかることなく、スムーズな抜け出しから後続を難なく振り切った。

 厩舎スタッフにとっても、精神的な成長を見せたこの阪神JFのレースぶりが、今後に向けてさらに大きな自信となったようだ。先述のトラックマンが続ける。

「陣営としても、3戦目までは"力まかせ"のレースという印象が強かったようですが、阪神JFでは『気性とパワーがかみ合った、言うことのないレースだった』と、厩舎スタッフらも自画自賛。同じ舞台で行なわれる桜花賞はもちろん、距離が延びるオークスについても、かなりの手応えを得た様子でした。現状では、これといった不安がまったく見当たりませんね」

 今後は、GIIIクイーンC(2月13日/東京・芝1600m)で復帰し、そこをステップにして桜花賞へと向かう。これから、他馬のマークは一層厳しくなるだろうが、それでも彼女が不動の最有力候補であることは間違いない。

 スタッフからの厚い信頼を寄せられているメジャーエンブレム。春のクラシックでも、磐石のレースぶりでタイトルを重ねていくのか、決戦の日が待ち遠しい。

河合力●文 text by Kawai Chikara