温泉を飲むと糖尿病予防が期待できるという研究を、慶応大先端生命科学研究所と日本健康開発財団のチームがまとめ、2015年12月に発表した。温泉は、浸かったり飲んだりすると様々な健康効果があるといわれるが、医科学的に飲んで血糖値が下がるメカニズムを確認した例は珍しいという。

研究チームが対象に選んだのは、大分県竹田市の長湯温泉。古くから湯治場として親しまれ、マグネシウム、カリウム、カルシウムが豊富な泉質だという。竹田市や地元の医療法人の協力を得て、健康な男女24人が1か月かけて温泉水と水道水を飲み比べた。

肥満を防止する善玉の腸内細菌が増える

その方法はこうだ。まず1日500ミリリットルの水道水を朝昼晩の食後に1週間飲み続ける。翌週は長湯温泉の温泉水に切り替えて同様に飲む。3週目は水道水、4週目は温泉水を飲み、週末ごとに血液と便を採取し、血糖値や代謝物質、腸内細菌など体内の様々なデータを調べた。

計画通り飲み続けた19人のデータを分析すると、うち16人が、水道水を飲んだ時に比べ温泉水を飲んだ時の方が血糖値の指標が下がった。さらに、温泉水を飲むと肥満防止効果がある善玉の腸内細菌が増えることもわかった。

チームのリーダーの同大大学院生・村上慎之介さんは「飲用だけではなく入浴した場合の効果も分析して、温泉の魅力を高める研究をしたい」と語っている。