【MLB】前田、爆弾を抱えていた右肘――ドジャース、出来高偏重の契約は日本球界への警鐘

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検査結果で見つかった異常


 交渉期限1日前の決着だった。ドジャース前田健太の8年契約が現地7日、本拠地ドジャースタジアムで正式発表された。

 日本時間の元旦に契約合意が報じられてから1週間以上。日米メディアやファンの間では、過去に例をみない契約内容が議論の的だった。そして入団会見では、そんな騒ぎに対して前田健自らが口を開いた。

「歴史と伝統あるドジャースの一員になれることを光栄に思います。今回の自分の契約内容に対して、様々な憶測を呼んでいますが、一部報道にあった通り身体検査において、イレギュラーな点がありました」

 イレギュラー。それは検査結果で異常が見つかったことに他ならない。前田健やドジャース球団はこれ以上の具体的な言及は避けたが、米メディアによると右肘に問題があったという。

 明らかになった契約の詳細は、極端な出来高偏重。
 年俸は300万ドル(約3億6000万円)に抑えられる一方で、出来高を含めると8年総額1億ドル(約120億円)以上に膨れあがる。出来高は先発試合数と投球イニング数により、メジャーで一流の先発ローテーション投手の基準となる年間32試合、200回以上を投げると、そのシーズンは満額の1015万ドル(約12億円)を手にできる。

出来高に比重を置いた契約が意味するもの


 本人はもちろん、ドジャースも最大の望みは前田健が8年間ローテーションを守り続け、出来高の満額を受け取ってチームを優勝に導くことだろう。ただ、ここまで出来高に比重を置いた契約は、現時点でそのシナリオの実現性が低いことを示唆している。

 両サイドが納得してサインを交わした以上、身体検査で下された診断に疑いの余地はない。蓄積疲労によるものなのか。前田健の右肘は、知らずのうちに爆弾を抱えてしまっていた。

 前田健は昨季も広島のエースとして206回1/3を投げ抜いた。自身2度目の沢村賞も受賞。プレミア12でも侍ジャパンのエースとして熱投した。大車輪の活躍の裏で、右肘のじん帯は確実に蝕まれていたわけだ。

 この契約は、日本人投手への一つの警鐘のようにも映る。実際に海を渡った日本人投手は、次々と肘のトミー・ジョン手術を迫られている。

日本人投手に突き付けられた課題


 今春復活を目指すダルビッシュ(レンジャーズ)だけでなく、それ以前には松坂(現ソフトバンク)、和田(現ソフトバンク)、藤川(現阪神)もメスを入れた。田中(ヤンキース)も右肘じん帯の部分損傷が発覚し、次に痛みを訴えれば手術は免れない状態だ。

 日本球界は、メジャーに比べれば負担の少ない中6日のローテーションが基本。ただその一方で、メジャーを志すようなエース級の投手は、常に完投・完封を期待されるなど負担が大きい。

 昨季の前田健も6月9日西武戦での135球を最多に、球数が120球を超えることが8試合もあった。
 田中でいえば、楽天最終年13年は、日本シリーズで第2、6戦に先発。特に第6戦では160球を投げ敗戦投手となりながら、翌日の第7戦では抑えで連投し日本一に貢献した。松坂、ダルビッシュらも、高校時代から甲子園などで酷使されていたのは共通項だ。

 消耗品と言われる投手の肘。その肘をどう守っていくのか、どう強化していくのが正しいのか。ドジャーブルーのユニホームに袖を通し、笑顔の前田健の後ろには、球界が迫られている大きな課題が透けて見えた。