マイナンバー制導入、うちの家計への影響は?

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10月から、国民1人ひとりに向け国から12桁の番号が記載された通知カードが送付されています。この「マイナンバー(社会保障・税番号)」は、国や自治体が、税や社会保障(年金・医療)の分野で個人情報を効率的に管理する制度。これまでは市町村役場、税務署、年金事務所、健康保険組合などで別々の“ユーザー番号(基礎年金番号など)”を付けていましたが、それが「共通の数字」に。いわば、史上最強のIDカードの誕生です。

では、国民のメリットは何か。例えば、行政手続きがカード提示だけで済むようになります。役所への各種申請・手続きが簡素化されるのです。

一方、行政側の最大のメリットは、国民の所得などが「ガラス張り」となることで、脱税や社会保険料の不払い、年金の不正受給などを防げること。「数字で国民を管理するのはいかがなものか」といったマイナンバーへの反発もありますが、まじめに働き・納税する多くの日本人にとっては歓迎すべき制度でしょう。

来年1月からこの制度はスタートしますが、国は段階的にマイナンバーの利用範囲を広げる予定です。

2018年からは銀行口座を持つ人のナンバー登録(任意・関連法案は審議中)が始まり、その後も、マイナンバーを健康保険証代わりにする、株式の配当や売却益の納税手続きを可能にする、戸籍とリンクさせて年金や相続の手続きを簡略化する、といった案が現在、検討されています。

ただ、マイナンバー導入で不利益を被る人も出てきそうです。会社の規則で副業が禁じられている場合、仮にこれまでこっそり続けられたものが会社に筒抜けとなります。副業収入があり確定申告が必要な人でも、それを怠っていた人もいました。今後は申告しなければ税務署からつつかれるはずです。

株の投資に関しても同様です。利益が出たら納税するのが正式な手続きですが、実際はしていない人も相当数いました。いずれはそうした行為は一切通らないでしょう。

これまでは失業保険をもらいつつ、ハローワークなどに内緒で働きちゃっかり収入を得るといった事例もありましたが、今後はそれもNG。

ここからは仮定の話ですが、将来的には当局がその気になれば、目を付けたある個人の銀行口座をチェックし、額の大きい振り込みがあった場合、「それは贈与にあたるのではないか」といった指摘をし、贈与税の支払いを命じる可能性も否定できません。だから、「記録」の残るお金のやりとりを避けるため、現金でのやりとりや、貸金庫の利用、タンス預金が増えるでしょう。それに伴い、タンス預金を狙った空き巣もこれから増加するかもしれません。

企業活動にもマイナンバーは影響を与えます。日本全体の9割超を占める中小企業のなかには、経営側が半分負担すべき従業員の社会保険料(厚生年金保険料など)を支払っていないケースもある。

ところが、マイナンバー導入で、そうしたルール違反が取り締まられるのは確実。過去にさかのぼって保険料などの支払いを求められれば、資金のやり繰りがさらに困難になることも。結果、従業員を解雇せざるをえない中小企業も出てくるかもしれません。最悪、失業者も出るのです。

国にしてみれば、これで税金や社会保険料の取りっぱぐれがなくなる。とはいえ、年金情報のように「流出」だけはしないよう番号を厳重管理してほしいものです。

(ファイナンシャル・プランナー 藤川 太 構成=大塚常好)