エマニュエル・ドゥボス

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 ボーボワールに見出され、自身の生と性を赤裸々に綴った処女作で1940年代後半のパリ文学界に衝撃を与えた実在の女性作家、ヴィオレット・ルデュックの半生を描く「ヴィオレット ある作家の肖像」が公開する。主演は仏名女優エマニュエル・ドゥボス。仏映画界で、ゆるぎない存在感を持つドゥボスが、作品と自身のキャリアについて語った。

 私生児として生まれ、戦中の貧しさと醜い容貌のため不遇の生活を送ってきたヴィオレットは、執筆に人生を賭ける。美しく才能あるボーボワールを信奉し、自身の半生を綴った小説はカミュ、サルトル、ジュネらに絶賛されたが、当時の社会には受け入れられず、ビオレットは精神を病む。傷心の中、パリから南仏に移り住んだビオレットは、自身の集大成的な作品「私生児」の執筆に取りかかる。監督は「セラフィーヌの庭」のマルタン・プロボ。

 1990年代からアルノー・デプレシャン、セドリック・クラピッシュ、ジャック・オーディアールら名匠たちの作品での卓越した演技力が高く評価され、いまやフランスを代表するベテラン女優として知られるドゥボス。出演作品を選ぶ基準は「まず、自分が一観客として、出来上がった作品を見てみたいなと思うこと。それから、役柄が自分に合っているか、気に入るかどうか。シナリオの質、監督の才能。そういったものを総合的に考えて決めます」と明かす。

 役者一家に生まれ育ち、自然に女優という職業を選んだ。「いろんな人の人生を演じることに魅力を感じたのかもしれません。一人の人間が役者になりたいと思う理由はいつも謎だと思います」

 本作のプロボ監督は、企画の段階から主演をドゥボスに決めていたそうで、ドゥボスも脚本がない段階でオファーを承諾した。「プロボ監督の『セラフィーヌの庭』が大好きでしたし、彼が変な作品を作るはずがないと信じていましたので」と即決した理由を明かす。

 実在の作家を演じるにあたっての役作りについてこう語る。「彼女の著作、ボーボワールらに宛てた手紙をすべて読みました。詳しい自伝も出ています。そういったものから、彼女のことはだいたいわかったので、監督がシナリオを書く上でも、私が演じる上でもインスピレーションの基はしっかりしたものがありました。実際、ヴィオレットの知り合いだった人にも会いました。作家のパトリック・モディアノは、映画を見て本物の彼女はもっと耐え難い女性だと言っていました。でも映画ではあまりひどい部分を見せてもいけませんし、少女のような可愛い面も必要でした」

 ボーボワールとの出会いが人生の転機となったヴィオレット。ドゥボスも生き方に影響を与えた人物や、転機はあったのだろうか。「ボーボワールはヴィオレットの人生で導き役のような存在で、師弟関係を超えた特殊な関係だと思います。私の人生で、大切な出会いはたくさんありますが、盲目的に自分のすべてを捧げてしまうような相手というのはいません。私は徐々にキャリアを積み上げたので、特別大きな変化はありませんが、ジャック・オーディアールの『リード・マイ・リップス』は賞もいただきましたし、映画も成功を収めました。ヴィオレットと同じように強烈な役柄でしたね。これは大きな出来事だったと思います」と振り返った。

 「ヴィオレット ある作家の肖像」は12月19日岩波ホールほか、全国順次公開。