(左から)樋口尚文氏、有馬稲子

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 第71回ベネチア国際映画祭で観客賞を受賞したイスラエル映画「ハッピーエンドの選び方」のトークイベントが12月16日、東京・シネスイッチ銀座で行われ、女優の有馬稲子が映画評論家で映画監督の樋口尚文氏と本作の魅力を語った。

 尊厳死を題材にした本作は、イスラエル・エルサレムの老人ホームを舞台に、発明好きな老人ヨヘスケル(ゼーブ・リバシュ)が、親友の頼みで発明した「自らスイッチを押して苦しまずに最期を迎える装置」が巻き起こす騒動を描く。コミカルなタッチながら、ヨヘスケルと認知症の兆候が表れた妻レバーナ(レバーナ・フィンケルシュタイン)の関係を中心に、死への向き合い方を問いかける濃密な内容となっている。

 小津安二郎監督の「東京暮色」(1957)などで知られる有馬は、昭和を代表する名女優のひとり。本作をすでに3回鑑賞したと明かし「本当にいい映画。誰でもその目にあっちゃう中で、どういう死に方をするか。笑いどころもありますし、色々なところで感心しました。切ないけどおかしい。監督のうまさなんでしょうね」と絶賛した。

 中でも主演のリバシュの演技には感銘を受けたそうで「ファンになっちゃった。本当に会いたい。結婚してもいい」とすっかりメロメロ。あふれんばかりの愛を熱っぽく語り、客席からは笑い声が上がるなど和やかなムードに包まれた。一方の樋口氏は、同じ老夫婦の愛情を描き第85回アカデミー賞で外国語映画賞に輝いた「愛、アムール」(12)を引き合いに出しながら、コミカルなシーンがちりばめられた本作のバランスの良さを指摘した。

 「延命治療はしないと決めているけれど、きっと思うように死ねないのでしょうね。映画のような装置があるといいなあ」と率直に語った有馬は、今年の9月5日に95歳で死去した原節子さんについても言及。「『東京暮色』の撮影でご一緒した際は、全世界のどんな女優さんよりも綺麗だと思った。(緊張のあまり)ろくに声もかけられませんでした。95歳とお聞きして、大変な生命力だなと(思った)。充分に映画(人生)を満喫なさったと思います」としみじみと語った。

 「ハッピーエンドの選び方」は、公開中。