ドルトムント対フランクフルトの一戦は4−1で決着、大方の予想通りの結果となった。フランクフルトは7分に先制したが、24分に追いつかれると、前半終了間際にはMFメドジェビッチが2枚目の警告を受けて退場となってしまう。すると後半に入ってドルトムントは怒濤の攻撃を見せ3得点し、あっさり逆転する。ヨーロッパリーグ、PAOK戦の敗戦を引きずらなかったドルトムントに、ここ7戦勝ちのないフランクフルトは成すすべもなかった。

 だが試合後の香川真司と長谷部誠は、結果とは真逆の対照的な表情を見せた。

 フル出場の長谷部は、時おり笑みさえ浮かべる落ち着いた表情で、淡々と、さばさばと試合を振り返った。

「1人少なくなったのは厳しい戦いになった要因だとは思いますけど、11対11でやっていても結構危ない場面もたくさんあった。先制点をとるまでは良かったかもしれないですけど、いつかはやられるかなという雰囲気はあったので、試合を通して非常に難しかったですね」

 時には6バックになるような、フランクフルトの徹底した守備的な布陣に、ドルトムントが攻めあぐねる時間帯もあった。

「守備的に戦って、相手が前に出てきたところをカウンターで狙うというのをやってたんですけどね。ドルトムントは次から次へ裏に走ってくるので、それにしっかり付ききれなかったのはあると思います。1点目も2点目も走られた選手にやられてるので、走られた選手につくという部分ができなかったですね」

 長谷部は自分たちのプレーを冷静に振り返っていった。負けが込みすぎて、一喜一憂などしていられないということなのかもしれない。

「チームもケガ人とか出場停止とか、メンバーが全然揃わない中でやっている。苦しいというか、なかなかうまくいかないというのはありますけど、そこは何かのきっかけで変えていかないといけないと思う。次は年内最後の試合ですし、そこでいいプレーをして、絶対勝ち点3をとらないといけない」

 チームの状態にいら立ちを見せるでもなく、あくまで淡々と受け止める様子は、ブンデスで長くプレーする貫禄にも感じられた。

 一方、香川はいら立ちで溢れていた。この日ドルトムントは先発メンバーを主力に戻したが、香川はベンチスタートだった。ロイスの負傷で43分から急遽出場したが、まずそのことが彼をいらだたせていた。

「(先発は)監督が決めることなので、選手としては悔しいですけど、切り替えてやるしかなかった。試合に勝ってまずは良かったと思います」

 それでも途中出場の香川は、好プレーを連発した。フランクフルトに動きが少なく、スペースを与えてくれることもあったが、中盤で出場しながら再三ゴール前に入る動きを見せた。

 後半12分、中盤からギュンドアンとのワンツーで抜け出し、ゴールライン際で追いつくとマイナスのボールを入れる。オーバメヤンはこれを難なく決め逆転に成功する。続く3点目も、ショートコーナーからミキタリアンのパスを受けると、やはりゴールライン際からマイナスのパス。これをミキタリアンがつなぎ最後はフンメルスが左足で押し込んだものだ。勝利への貢献度は低くない。

「(2点目は)いい形で崩せたと思いますし、イメージの共有が大事なので、それがしっかりと結果に表れて次につながると思います。得点に絡むことにこだわってやれていますし、次もまたしっかりそういうところを準備してやっていきたいと思います」

 そう語る香川だが、声のトーンはいまひとつ冴えなかった。香川の場合、「全試合先発フル出場」をベストと考え、それに耐えうるコンディション調整を行なっている。どれだけいいプレーを見せても、貢献度が高くても、先発で使って欲しいという気持ちが勝るようだ。

 ふたりの日本人選手の対照的な様子が印象的な一戦だった。

了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko