国際競馬シーンの1年の締めくくりとなる『ロンジン香港国際競走』(毎年、12月中旬に開催される香港ジョッキークラブ主催の国際競馬イベント)が、12月13日に香港・シャティン競馬場で開催される。

 この日に行なわれる国際招待レースは、香港カップ(芝2000m)をメインに、香港スプリント(芝1200m)、香港マイル(芝1600m)、香港ヴァーズ(芝2400m)の4つ。以前から日本調教馬も多数参戦する注目の舞台で、近年では地元・香港馬が圧倒的な強さを見せてきた香港スプリントで、ロードカナロアが連覇(2012年、2013年)を遂げて話題になった。

 ちなみに昨年は、香港ヴァーズ以外の3つのレースで香港馬が勝利(香港ヴァーズは、フランスのフリントシャーが勝利)。一方、日本馬の主な成績は、今年GI2勝(ヴィクトリアマイル、スプリンターズS)を挙げたストレイトガール(牝6歳)が香港スプリントで、グランプリボス(牡7歳)が香港マイルで、それぞれ3着と健闘した。

 そして今年は、香港ヴァーズを除く3競走に、過去最多となる10頭の日本調教馬が出走予定だ(昨年も10頭の日本調教馬が登録したが、マイネルラクリマが現地入りしたあとに故障して回避)。しかも、10頭中5頭がGI馬という、これまでにないほどの"強力布陣"で挑む。

 4つの国際競走のうち、当日最初に行なわれるのは、香港ヴァーズ。日本馬が出走しないため、日本での関心度は低いかもしれないが、前年の覇者で、凱旋門賞2年連続2着のフリントシャー(牡5歳)が出走する。当初出走予定だったジャパンカップ(11月29日/東京・芝2400m)をあえてスキップして、このレースに的を絞ってきた世界屈指の実力馬の走りには注目したい。

 続いて行なわれるのは、香港スプリント。日本からは前述したスプリンターズS(10月4日/中山・芝1200m)の覇者ストレイトガール、同2着のサクラゴスペル(牡7歳)に、ミッキーアイル(牡4歳)が出走する。

 ストレイトガールにとっては、これがラストラン。勝利して、引退に華を添えたいところだ。高松宮記念(3月29日/中京・芝1200m)を快勝し、最大のライバルと目されていた地元・香港馬のエアロヴェロシティ(せん7歳)が戦線離脱。その分、勝つチャンスは広がったと見ていい。

 とはいえ、エアロヴェロシティ不在でも「スプリント王国」と称される香港勢の層は厚い。なかでも強力なのは、ゴールドファン(せん6歳)。昨年の香港マイル2着馬で、短距離路線に変更した今春はエアロヴェロシティも撃破し、今回も本命視されている。さらに、昨年の香港スプリント2着馬ペニアフォビア(せん4歳)も軽視は禁物だろう。

 また、アメリカから参戦してくるグリーンマスク(せん4歳)も不気味な存在だ。前走は、アメリカの競馬の祭典『ブリーダーズカップ』ターフスプリント(10月31日/キーンランド・芝5.5ハロン)に出走して3着に終わるも、ストライドの大きい走法は、アメリカの小回りトラックよりも、広いシャティン競馬場向き。早々に香港入りして、意欲的に調教をこなしている様子からも、かなりの勝負気配がうかがえる。

 香港マイルには、安田記念(6月7日/東京・芝1600m)、マイルCS(11月22日/京都・芝1600m)を制覇したモーリス(牡4歳)に、マイルCS2着のフィエロ(牡6歳)、昨年の朝日杯フューチュリティSの優勝馬ダノンプラチナ(牡3歳)という強力メンバーが日本から参戦。それぞれチャンスはあるが、特に期待がかかるのは、やはり"日本のマイル王"モーリスだろう。

 ライバルは、「アジア最強のマイラー」と言われるエイブルフレンド(せん6歳/香港)と、フランスのジャック・ル・マロワ賞(8月16日/ドーヴィル・芝1600m)の覇者エゾテリック(牝5歳/フランス)。現地では、これにモーリスを含めた「3強」の争いと見られているが、モーリスがそれら強敵を下して、"世界のマイル王"の称号を手にする姿を見てみたい。

「3強」の一角崩しがあるとすれば、地元・香港馬の安定株コンテントメント(せん5歳)に、マイルCS出走を自重し、フレッシュな状態で臨めるダノンプラチナ。いずれにしても、世界トップクラスのマイラーたちが一堂に会した一戦は見逃せない。

 トリを飾る香港カップには、日本調教馬4頭が出走。昨年のオークス馬で、先のエリザベス女王杯(11月15日/京都・芝2200m)2着のヌーヴォレコルト(牝4歳)をはじめ、天皇賞・秋(11月1日/東京・芝2000m)2着のステファノス(牡4歳)、そしてエイシンヒカリ(牡4歳)、サトノアラジン(牡4歳)と、4歳秋という充実期にある面々が、1着賞金1425万香港ドル(およそ2億2300万円)獲得を狙う。

 ステファノスは、今年4月に今回と同じコースで行なわれたGIクイーンエリザベス2世カップで2着と好走。好メンバーがそろった天皇賞・秋でも2着と奮闘し、再び香港での躍動が期待されている。

 エイシンヒカリは、その天皇賞・秋で9着と人気を裏切ってしまったが、一昨年の香港カップで今回のエイシンヒカリと同じようなステップを踏んだトウケイヘイローが2着という好結果を出した。同馬の手綱をとったのは、エイシンヒカリの鞍上を務める武豊騎手。似たタイプの馬だけに、名手が一昨年の再現を果たしてもおかしくない。

 また、ヌーヴォレコルトも、今春の中山記念(3月1日/中山・芝1800m)では、前述のステファノスやロゴタイプ(牡5歳)ら牡馬一線級を一蹴。牡馬相手にも十分な実績を残しており、勝ち負けに加わっても不思議ではない。しかも今回、鞍上はライアン・ムーア騎手。世界的な名手に導かれてビッグタイトルを手にするのか、必見である。

 迎え撃つのは、香港カップ4連勝中の地元・香港勢。昨年の覇者デザインズオンローム(せん5歳)を筆頭に、昨年2着のミリタリーアタック(せん7歳)、そして今春のレースでステファノスを下しているブレイジングスピード(せん6歳)など、実力馬が顔をそろえる。ただし、それぞれピークを過ぎた感があって、付け入る隙は十分にある。

 むしろ、侮れないのは、他の海外勢。この春、日本からスピルバーグ(牡6歳)が参戦したイギリスGIのプリンスオブウェールズS(6月17日/アスコット・芝2000m)を快勝したフリーイーグル(牡4歳/アイルランド)や、今春のクイーンエリザベス2世カップでステファノスに次いで3着に入ったオーストラリアのクライテリオン(牡4歳)のほうが、香港馬に比べて勢いがある。日本馬にとっては、これら難敵をどうしのぐかが、栄冠獲得へのポイントになりそうだ。

 かつて、日本馬が4つのレースのうち、3つのタイトルを一度に手にしたことがある。2001年のことだ。香港ヴァーズをステイゴールドが、香港マイルをエイシンプレストンが、そして香港カップをアグネスデジタルが制した。今回、メンバーを考えれば、その再現を成し遂げることは十分に可能である。その瞬間を、ぜひ見届けたいものだ。

 また、来年には海外ビッグレースの日本での馬券販売スタートが見込まれている。その中で、この香港国際競走は、馬券発売対象レースになることが確実視されている。とすれば、今後は日本馬の応援だけでなく、競馬ファンには、馬券購入を考慮して、冷静なレース検討も求められる。

 今回は、その予行演習を兼ねて、馬券をシミュレーションしながら観戦してみてはどうだろうか。何はともあれ、日本の競馬ファンにとって、今年の香港国際競走は見逃すことができない一大イベントと言えそうだ。

土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu