「LGBTQI」のQIって何? 誤解されやすい性的マイノリティとインターセックスの違いとは

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先月5日から、東京の渋谷区と世田谷区で、同性カップルに証明書や宣誓書の受領書を発行する行政サービスが開始されました。また、大阪の淀川区のように「LGBT支援宣言」を表明し、啓発活動に取り組む自治体も出てきており、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(身体的・社会的に割り当てられた性別とは異なる性別を自認する人/性同一性障害に含まれる場合も)の頭文字を取った「LGBT」という言葉も、少しずつ社会に浸透しつつある印象を受けます。

LGBTQIとは?


しかし、性的マイノリティと呼ばれる人々の中にはこうしたカテゴリに収まらないさまざまな性自認(ココロの性)や性的指向(どんな性別の人を好きになるか)を持つ人が存在しています。そのため、最近ではLGBTに「QI」を追加した「LGBTQI」という言葉も使われるようになってきました。

このQIの「Q」はクィア/クエスチョニングの頭文字です。このうちクィア(Queer)は性的マイノリティを包括的にあらわす言葉であり、クエスチョニング(Questioning)は、自らの性自認や性的指向に迷い、探している状態の人々を指します。
また、QIの「I」はインターセックス(Intersex/性分化疾患)の頭文字ですが、インターセックスを性的マイノリティに分類することについては反対意見も多くみられます。性分化疾患は、卵巣・精巣といった性腺や染色体などが男性型・女性型に統一されていないか、あるいは判別しにくいため「性の発達が先天的に非定型である状態」を指す医学用語ですが、このこと自体は性自認や性的指向とは関係がありません。また、性分化疾患はこうした症例の総称であり、自分のこうした「性」についての特徴に本人や周囲が気づかないケースも多く、また気づいたとしても出生時に診断された(男性または女性の)性別で普通に暮らしている人がほとんどです。

その一方で、インターセックスには「半陰陽」や「両性具有」という訳があてられることもあり、インターセックスが「男性器と女性器の両方を持つ人」と誤解されるケースがあります。また、近年では小説やコミックなどでインターセックスが「男性でも女性でもない性」として描かれるケースもみられますが、上記のとおり性分化疾患の当事者は男性・女性として普通に暮らしているケースがほとんどであり、こうした作品については「誤解を助長している」という批判もあります。

また、性分化疾患を「インターセックス」「IS」と呼ぶことについても反対意見がありますが、そもそもさまざまな症状をまとめた言葉に対して、わかりやすい呼称をつけること自体、無理があるのかもしれません。

メディアで描かれる姿と実像のギャップ


上記の例のように、メディアに「刺激的な題材」として一部の例や誇張された姿が取り上げられ、実像とのギャップや誤解に悩み、苦しんでいる人々が多いのはLGBT、性的マイノリティについても同じことがいえます。

たとえばアメリカではここ数年で、オバマ大統領やブラッド・ピット&アンジェリーナ・ジョリー夫妻といった著名人が同性婚支持を表明したり、トップアイドルであるマイリー・サイラスがパンセクシュアル(全性愛/男性・女性の分類にあてはまらない人も含む、あらゆる人々が恋愛や性愛の対象となる人)であることを公言したり、トップアスリートが同性愛者であることを告白したりと、「社会的に影響力の大きい人」が性的マイノリティやLGBTQIについてアクションを起こす事例が多く見られるようになりました。

しかし、日本においてはこうした例はなかなか見られず、一部の「オネエタレント」と呼ばれる人たちを除くと、著名な俳優やタレント、ミュージシャン、スポーツ選手などでLGBTをカミングアウトしている人はほぼ見あたらない状況です。また、「オネエタレント」にしても、テレビなどでは「色物・お笑い担当」的な扱いをされているケースが多く、こうした傾向が同性愛者やトランスジェンダーを「笑いの対象にしてもいい」という風潮を作り出している可能性もあります。

著名人がカミングアウトできない背景には、「社会に受け入れられない不安」が大きいと考えられますが、こうした状況が変わらない限り、LGBTQIの実像は、なかなか世間に伝わりにくいのかもしれません。まずは、自分と違う「性」の実際について正しく知ることから、差別や偏見は無くなっていくのですから。

<執筆者プロフィール>
井澤佑治(いざわ・ゆうじ) ライター
通販メーカーのコピーライターとして、健康食品などの広告を数多く手がけたのちに、ダンサーとして独立。国内外で公演やワークショップ活動を展開しつつ、身体操作や食事療法などさまざまな心身の健康法を探究する。現在はダンスを切り口に、高齢者への体操指導、障がいや精神疾患を持つ人を対象としたセラピー、発達障害児の療育、LGBTの支援などにも携わっている。

<参考>

http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_gender.html

(厚生労働省 性同一性障害)

http://jspe.umin.jp/pdf/seibunkamanual_2011.1.pdf#search='性分化疾患'

((日本小児内分泌学会性分化委員会 性分化疾患初期対応の手引き)

http://www.tv-tokyo.co.jp/is/whatsis/
(ISとは? テレビ東京)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151118-00010001-dmenueiga-movi&p=1
(カミングアウト、ボイコット、サポート……LGBTQIをめぐるセレブの動き dmenu映画)