世界が注目! ジャパンカップ有力馬プレビュー(4)

 世界中から注目を集めるGIジャパンカップ(東京・芝2400m)が、11月29日に開催される。

 2006年から連勝し続けている日本調教馬は、今年もGIウイナー5頭を擁する陣容。連勝記録をさらに伸ばせる面子はそろっている。ただ、今年の日本の中距離路線は、宝塚記念(6月28日/阪神・芝2200m)、天皇賞・秋(11月1日/東京・芝2000m)と、ふたつのGIを制したラブリーデイ(牡5歳)が一気にブレイクしたものの、例年に比べてやや活気に欠け、メンバーの質自体に疑問を持つ声もある。

 そこで、「今年こそ」と注目したいのが、4頭の海外招待馬勢だ。世界最高峰のレースである凱旋門賞(ロンシャン・芝2400m)で2年連続2着という成績を残して、今年最大の目玉と見られていたフリントシャー(牡5歳/フランス)の来日は実現しなかったが、海外でのGI実績豊富な、粒ぞろいのメンバーが参戦。日本勢の地力が疑問視されている今回、10年ぶりに外国馬が頂点に立つ可能性は十分にある。

 なかでも注目したいのは、フランスのイラプト(牡3歳)。今年の7月に行なわれた3歳GIのパリ大賞(7月14日/ロンシャン・芝2400m)を、デビューから4戦無敗で制した実力馬だ。

 その後、凱旋門賞のステップレースとなるGIIニエル賞(9月13日/ロンシャン・芝2400m)では4着に敗れて、連勝はストップ。続く大一番の凱旋門賞(10月4日)でも5着にとどまったが、一昨年、昨年と凱旋門賞連覇を飾った女傑トレヴ(牝5歳/フランス。4着)とは1馬身半差と、力のあるところは示した。

 フランス在住の競馬ジャーナリスト沢田康文氏は、イラプトの実力を高く評価。「速い馬場にも適性がある」と分析する。

「今年のフランスの3歳牡馬では、仏ダービー馬で、凱旋門賞3着のニューベイ(牡3歳)に次ぐ、2番手の存在。道悪の馬場だったニエル賞では大差の4着に敗れましたが、乾いた馬場で行なわれた凱旋門賞では、着順は5着と落としながらも、勝ち馬とは4馬身差と巻き返しました。今年の凱旋門賞5着は、とても価値があるものです。力があるのは確かで、同時期のフリントシャーと比べても遜色ないと思います」

 この馬が勝ったパリ大賞は、前述のフリントシャーも3歳時に制しているレースで、2006年の勝ち馬レイルリンクは、その秋にディープインパクトが出走した凱旋門賞を制覇。このレースを機に、その後飛躍を遂げている馬は少なくない。前述の沢田氏が続ける。

「(イラプトの)陣営は、パリ大賞を勝った直後から、ジャパンカップに興味を示していました。パリ大賞の勝ち馬は、ジャパンカップにおける褒賞金(※)を得られる対象馬ですからね。もしイラプトがジャパンカップを勝てば、1着賞金3億円プラス、褒賞金8000万円を手にすることができて、その金額は凱旋門賞の勝ち馬の賞金(500万ユーロ)とほぼ同じ。当然、勝負度合いは高いと思います。

 とはいえ、賞金狙いで無理に出走するわけではありません。現地11月12日の朝、主戦のパスキエ騎手の騎乗で国内最終追い切りを行なって、そこで状態をしっかりと確認したうえで、正式にジャパンカップの招待を受諾しました。レースに向けて、それだけ万全を整えての参戦です」
※海外の指定競走における優勝馬が、ジャパンカップに出走して結果を出した場合(1〜3着馬)に得られる賞金。

 イラプトのオーナーであるニアルコス・ファミリーは、これまでにヌレイエフ、キングマンボといった世界的な名馬を所有。ジャパンカップにも、過去に多くの有力馬を送り込んできた。1994年に4着、翌1995年に3着と好走したエルナンド(1994年凱旋門賞2着)や、2004年に凱旋門賞を制したバゴ(2005年ジャパンカップ8着)などがそうだ。

 そうした実績から、ジャパンカップに対する本気度はかなり高いと見ていい。調整も抜かりなく、ここで世界レベルの強さを見せつけてもおかしくない。

 このイラプトに続くのが、トリップトゥパリス(せん4歳/イギリス)。近年のトレンドのひとつにもなっている、オーストラリア・メルボルンを中心に開催されるスプリングカーニバル(毎春行なわれるオーストラリアの競馬の祭典)を経て、日本にやって来るヨーロッパの調教馬だ。

 同馬が重賞戦線に名を連ねるようになったのは、4歳となった今年から。それでも、オーストラリアのGIコーフィールドカップ(10月17日/コーフィールド・芝2400m)で2着と好走すると、続くオーストラリア最大のレース、GIメルボルンカップ(11月3日/フレミントン・芝3200m)でも4着と健闘。日本から参戦したフェイムゲーム(牡5歳。13着)、ホッコーブレーヴ(牡7歳。17着)らとは対照的な結果を残した。

 主な実績は他に、イギリスのGIアスコットゴールドカップ(アスコット・芝4000m)勝ちなどがある。その成績から、一見するとコテコテの長距離馬に映るかもしれないが、オーストラリア遠征で手綱をとり、今回のジャパンカップでも鞍上を務めるトミー・ベリー騎手は、「(トリップトゥパリスのことを)単なるステイヤーといった、変なイメージは持たないほうがいい」と語る。

「ジャパンカップは、もともと(日本馬の)トーセンスターダム(牡4歳)に騎乗予定だったんだけど、同馬はマイルCS(11月22日/京都・芝1600m)に回った。そこで、トリップトゥパリス陣営から改めてオファーをもらいました。

 同馬は、走りも軽く、自在性もある。そういう意味では、長距離馬というより、2着に好走したコーフィールドカップ(芝2400m)こそ、この馬本来の適距離だと思う。つまり、ジャパンカップの条件は決してマイナスではありません。その活躍を期待してほしいし、僕自身、ジャパンカップでの騎乗を楽しみにしています」

 トリップトゥパリスを管理するのは、2010年、2011年とエリザベス女王杯連覇を飾ったスノーフェアリーなどで日本でもお馴染みの、E・ダンロップ厩舎。さらに、先のメルボルンカップで負った故障が原因でこの世を去った名馬レッドカドー(2013年天皇賞・春3着)の帯同スタッフでもあった、ヘッドラッド(競走馬の遠征における最高責任者)のロビン・トレヴァー=ジョーンズ氏に、攻馬手のスティーヴン・ニコルソン氏らが、今回はトリップトゥパリスに帯同。この一戦にかける思いは強い。

 はたして、地の利を生かした日本調教馬が今年もジャパンカップを制するのか。それとも、外国招待馬が10年ぶりに覇権を奪還するのか。注目のゲートがまもなく開く。

土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu