世界が注目! ジャパンカップ有力馬プレビュー(2)

 国内最高の優勝賞金(3億円)を誇るGIジャパンカップ(東京・芝2400m)。11月29日に迫ったこの一戦において、主役を務めるのは、充実一途のラブリーデイ(牡5歳)だ。

 2012年夏にデビューしてから昨年までは、17戦して3勝。何度となく挑戦した重賞タイトルは、一度も手にすることはできなかった。しかし今年に入ってから、GIII中山金杯(1月4日/中山・芝2000m)で重賞初制覇を飾ると、ここまで8戦6勝という輝かしい成績を収めている。しかも6勝すべてが重賞で、そのうちふたつはGI勝利(宝塚記念、天皇賞・秋)である。ラブリーデイはこの1年で、まさに飛躍的な進化を遂げてきた。

 前走のGI天皇賞・秋(11月1日/東京・芝2000m)でも、早めの抜け出しから押し切り、磐石のレース運びで快勝した。ジャパンカップでも、間違いなく1番人気に推されることだろう。

 それにしても、なぜラブリーデイはこれほど急に強くなることができたのか。その真相を探るべく、ノーザンファームしがらき(滋賀県)の村上太郎氏に話を聞いた。

 ノーザンファームしがらきは、レースの合間の短期放牧などで使われる競走馬の調整施設。その地で同馬を担当してきた村上氏は、急成長の理由について、まず「肉体面の変化」を挙げる。

「腰回りからお尻にかけての筋肉は、今年に入ってすごくよくなりましたね。もともと、右のトモ(後脚の腰から付け根までの部分)に弱いところがあったのですが、それがなくなりました。見た目も前とは全然違います。トモが立派だった父キングカメハメハのイメージに近づいてきました」

 昨年に比べると、ラブリーデイの馬体重は少し増えた程度。だが、そういった数字以上に、中身の筋肉が変わってきているようだ。そしてそれが、快進撃の"源"となっていると言える。

 もちろん、それだけの肉体強化を図るには、相当なトレーニングが必要になるが、この馬の場合、そういった"ハードトレーニング"を「馬自身が進んで行なっていたのかもしれない」と、村上氏は語る。

「(ラブリーデイは)真面目な性格で、走ることが大好き。ですから、いつも一生懸命走るんです。そのうえで、珍しいほど体質が強い馬で、コンスタントに出走しながらも、レース後にガクッと疲れが出ることがほとんどありません。その結果、数多くの調教量をこなすことができて、しかも毎回(調教でも)きちんと全力を出し切る。それが自然とハードトレーニングとなり、馬体の成長につながったのかもしれません」

 昨年11月からレースに出続けてきたラブリーデイにとって、今夏は久々の休養期間だった。しかしその間も、「レースに出られるくらい元気だった」と村上氏は言う。また、「レースで全力を出そうとしない馬、真面目に走ろうとしない馬は、なかなか体も成長しにくい」とも語る。そんな村上氏の話からも、ラブリーデイの急伸の秘密が読み取れる。

 つまり、「体質の強さ」と「走ることへの真面目さ」が、ジャパンカップで主役を張るまでの"肉体の進化"をもたらしたのだ。

 しかもラブリーデイの進化は、肉体面だけにとどまらない。レースにおける折り合い面においても、確実に成長してきているという。村上氏が語る。

「走るのが好きなので、もともとレースでは少し力んでしまう面がありました。ですから、以前は2400mくらいの距離だと、折り合い面で不安があったんですね。でもここに来て、その不安は解消されてきました」

 秋の始動戦となったGII京都大賞典(10月12日/京都・芝2400m)。ラブリーデイは、2400mのゆったりとしたペースにも落ち着いて対応し、最後は上がり32秒3の豪脚で完勝した。村上氏はこのレースを見て、折り合い面の成長を確信したという。

 また、前走の天皇賞・秋でも、前半では久々に力む面を見せたが、途中からきっちりと我慢して直線で抜け出した。こういった折り合い面の向上も、今年の快進撃につながっていることは間違いない。

 なお、この成長については、村上氏が考えるターニングポイントがある。それは、今春のGII阪神大賞典(3月22日/阪神・芝3000m)から、GI天皇賞・春(5月3日/京都・芝3200m)にかけてのことだ。

 この2戦は、ラブリーデイが今年に入って2回だけ黒星を喫した舞台。それが折り合いの改善につながったとは、どういうことだろうか。「あくまで個人的な意見ですが......」と前置きしたうえで、村上氏が説明する。

「阪神大賞典は、初めて経験する3000m戦で6着に敗れました。タイム差で見ると、先頭から1秒6も離された大敗だったんです。でも、次の天皇賞・春では8着に負けながらも、勝ち馬とはコンマ5秒差でした。前走と比べて、かなり踏ん張ってくれたんですよね。3000m以上のレースでは折り合いが大事ですから、あの走りの良化は折り合いの成長があってこそ。ですから、ラブリーデイにとってあの2戦は、いい"折り合いの勉強"になったと思うんです」

 ラブリーデイの活躍について、村上氏は「『成長した』とはいっても、GI2勝はうまくいき過ぎです(笑)。展開に恵まれた面も多々あったので......」と、あくまで控えめなコメントに終始する。そして、「ジャパンカップでは、とにかく無事に走ってくれれば」と思いを述べた。

 それでも、同馬が優勝を狙える位置にいるのは確か。3つ目のGIタイトルへ向けて、これといった不安はない。

 競馬史をひも解いても、これほど急激に自分の地位を上げた馬は少ないだろう。ラブリーデイは、まさしくサラブレッドの"不思議"を体現した競走馬である。が、その"不思議"もまだほんの始まりに過ぎないのかもしれない。

河合力●文 text by Kawai Chikara