JR東海がすすめているリニア中央新幹線事業について、予定ルートの沿線住民などから不安や疑問が相次いでいます。事業着工を認可した国土交通省にたいする住民の異議申し立ては約5000件に達し、新たに認可取り消しを求める行政訴訟を起こす動きもあります。JR東海が行っている地元関係者への説明会でも懸念の声は根強く出されています。異論を置き去りにしたまま、工事を推し進めることは許されません。

相次ぐ不安と疑問の声

 リニア中央新幹線は、2027年に品川(東京)―名古屋で開業し、45年に大阪まで延伸させる計画です。ルートの8割以上は地下のトンネルで結ぶという、日本の開発史上前例のない未曽有の超巨大開発です。南アルプスをはじめルート予定地では自然・生活環境の深刻な破壊を引き起こすことが指摘され、環境相からも「相当な環境負荷が生じる」などと異例の意見がついている事業です。

 JR東海は不安や疑問にまともにこたえないまま昨年、品川―名古屋間の着工認可を申請し、国交省は昨年10月に着工を認可しました。これを受けJR東海は本格的な着工へ向け大手ゼネコンへの工事発注、用地取得のための地元説明会などをすすめています。

 しかし、南アルプス工事の関係自治体で今月開かれた説明会でも、観光や生活への影響、トンネル工事で発生する大量の残土搬出などについて多くの意見が出され、不安と懸念の強さを浮き彫りにしています。関係住民にきちんと説明されない地域もあり、JR東海の対応への不信も募っています。

 沿線7都県(東京、神奈川、山梨、静岡、長野、岐阜、愛知)の全関連自治体で行った日本共産党国会議員団の現地調査では、住民や自治体関係者から不安と疑問の声が次々寄せられました。動植物や生態系への影響、河川の水枯れ、1日1000台規模の工事車両の往来による生活環境破壊、膨大に排出される残土の置き場確保とその安全性、住居移転など深刻な問題だらけであることは明らかです。JR東海の計画を、まともにチェックすることなくゴーサインを出した国交省の責任は重大です。

 従来の新幹線と全く異なる超電導磁石という新技術で車体を軌道上に浮かせ、運転士を置かないで最高時速約500キロの猛スピードで走らせる構想自体への疑問もぬぐえません。事故や災害の時にトンネルから乗客をどのように避難させるのか。発生する電磁波は人体にどう影響するのか。約9兆円の事業費はさらに膨張することも見込まれるのにJR東海だけでその負担が賄えるのか―。問題山積のリニアを「成長のチャンス」と推進する安倍晋三政権の姿勢は異常です。

国民的な議論こそ必要

 リニア計画は、国民の切実な要求から出発したものではありません。むしろ人口減少社会に向かう日本にとって新たな「お荷物」を抱え込むことへの危ぐの声が上がっています。膨大な電力が必要なリニアは原発ゼロ・省エネルギーを求める世論に逆行しています。

 いま必要なのは国会をはじめとする国民的な議論です。一度壊された自然や国土は元に戻すことはできません。本格着工や工事推進に向けて「見切り発車」することは、取り返しのつかない重大な禍根を将来に残すだけです。