アジア・2次予選での4戦連発を記録。本田の決定力は、現代表のなかで群を抜いている。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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「個人的には、点が取れていなかったら最悪な試合だった」
 
 シンガポール戦後のミックスゾーンを素通りした本田は2日後、カンボジアに入って初めての練習を軽めに切り上げ、改めて自身の低調なパフォーマンスを振り返った。
 
 実際に、動きにはキレがなく、プレー強度も低かった。体力十分のはずの前半から安易にボールをロストするなど、明らかに本調子ではなかった。イタリアでプレー時間が確保できず試合勘を含めた状態が懸念されたなか、「コンディションを含めて、全然整っていなかった」(本田)と漏らす。格下相手の再戦で「チームとしてはホームでのシンガポール戦から少し改善できた」(本田)にもかかわらず、背番号4の存在感は間違いなく薄れていた。
 
 シンガポール戦直前のハリルホジッチ監督は、「疲れている選手にはリスクを冒したくない」とし、メンバーの変更を示唆。その言葉どおりに香川、岡崎らがスタメンを外れた。しかし、本田はいつも通りの右サイドで先発している。
 
 なぜか。第一に、指揮官は「疲れている」欧州組を懸念したが、試合勘不足については一切言及していない。若干屁理屈に聞こえるかもしれないが、そこにはミランでベンチ要員となっている本田への配慮があったのではないか。
 
 さらに大きな理由が、本田の得点力だ。多少プレーに精彩を欠いても、ここ一番の場面に顔を出し、決め切る。その点で本田は傑出している。シンガポール戦のゴールで、アジア・2次予選での4戦連発を記録。本人は「考えたことなかった」とそっけないが、フィニッシャーとして優秀な数字だ。
 
 FWとして求められるのは、なによりもゴール。現役時代に同ポジションを担ったハリルホジッチ監督はなおさら、その部分をシビアに考えても不思議ではない。ましてや前回のシンガポール戦では、あれだけチャンスを作りながら決め切れなかったのだから(もちろん、その試合にも本田は出場していたが)、今回はゴールに比重を傾けただろう。
 
 崩しのなかで効果的な絡みが見せられない本田は、スタメンを外されてもおかしくない。だが、本田以上にゴールの計算が立つ選手が、今の日本にはいない。それもまた事実だ。
 
取材・文●増山直樹(サッカーダイジェスト編集部)