香川の代役として、トップ下で及第点の働きを見せた清武。ハリルホジッチ監督もそのパフォーマンスに満足したはずだ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 11月12日のシンガポール戦。日本は危なげない戦いを見せながら勝点3を手にしたね。この内容や結果については、誰もが納得のいくものだったんじゃないかな。

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 ハリルジャパンに初めて招集された金崎が代表初ゴールを決めたし、香川の代役としてトップ下を務めた清武のパフォーマンスも良かった。約3年ぶりに日本代表のスタメンに返り咲いた柏木も、スムーズにチームにフィットしていたように感じた。
 
 この“新しい3人”の活躍をどのメディアも賞賛していたけれど、誰よりもそれを望んでいたのはハリルホジッチ監督だっただろう。
 
 ずっと言い続けていることだけど、ワールドカップ2次予選の対戦相手のレベルを考えたら、すべての試合は完勝して当然だよ。前回のシンガポール戦はたまたま2次予選の初戦で、しかも満員のホームスタジアム。過度のプレッシャーがかかって、しかも相手GKの”当たり日”だった。スコアレスドローに終わったあの試合は、日本にとって本当にアンラッキーだったと言うしかない。
 
 つまり僕が言いたいのは、2次予選はあくまで大会のレギュレーション上、戦わざるを得ないだけであって、日本の実力や立ち位置を考えれば、本来はシードになって出場しなくてもいいくらいだと思っている。
 
 極論を言えば、2次予選は来たるべき最終予選の“ファーストチョイス”の見極めの場だと、個人的には思っている。
 
 最終予選で起こりうるだろう様々なシチュエーションを想定すれば、それに対応できるだけのいろんなタレントやオプションを持っておきたいと思うのは、監督としては当然だよね。だからこそ、ファーストチョイスに頭を悩ませるぐらいの選択肢を作るために、戦力の充実化を図ることが求められる。
 
 その準備期間が、今まさに戦っている2次予選という場だ。そこで指揮官はたくさんの選手にチャンスを与えて、選手たちもそのチャンスを掴み、モノにしていく。こうした好循環が、チームにとって一番の強化策になる。
 
 就任当初からハリルホジッチ監督は「世代交代」を求めて、多くの選手にチャンスを与え続けてきた。ジーコジャパンに次いで、すでに2番目に多い数の選手を呼んでいるみたいだ。こうした積極性の裏側には、最終予選を勝ち抜くためのオプション作りという意味合いがあるのだろう。
 その点で考えると、今回のシンガポール戦を経て、ハリルホジッチ監督は新たなオプションを手にいれたと言えるかもしれない。そのひとつが「柏木」というカードだ。
 
 シンガポール戦で彼がプレーしたポジションはボランチだったが、そのボランチこそ、僕がこの代表チームで最も競争力の低下を懸念していたエリアでもあった。
 
 遠藤と長谷部が長らくコンビを組んでいて、去年のブラジル・ワールドカップからは山口が加わってきた。その3人をベースに、どれだけの新戦力が出てくるのだろうと期待して見てきた。長谷部と遠藤に代わりうるコンビは今のところ出てきていないものの、柴崎というニューフェイスが登場し、さらに今回のシンガポール戦で柏木も戦力として計算できることが分かったはずだ。
 
 現状の序列を見ると、一番手は長谷部だろう。僕が監督だとしても、攻守のバランス感覚に優れ、リーダーシップを兼ね備える長谷部は絶対に外せない。そのパートナー探しで、遠藤に代わる絶対的な存在は見当たらないが、相手チームによって戦い方を変えられるだけの様々なタイプが揃ってきた。
 
 山口、柴崎、柏木。この3人のタイプを大きく分ければ、山口はディフェンシブなタイプで、柴崎はオールラウンダータイプ、そして柏木はオフェンシブなタイプ。言い換えれば、相手が強ければディフェンシブな山口を長谷部のパートナーに起用し、相手が格下ならばパスセンスに優れる柏木をピッチに送り出す。柴崎はどちらにも対応できるタイプで、いずれは長谷部のポジションを奪わなければいけないひとりだが、現状は長谷部の代役としても期待できる存在と見ていいだろう。
 
 山口、柴崎、柏木。まさにこの「三者三様」のボランチをどう使いこなしていくか。柏木の台頭によって、最も懸念していたエリアは、最も面白いエリアになってきた。次のカンボジア戦ではどんな組み合わせで戦うのか。ハリルホジッチの手綱さばきに注目したい。