健康被害だけでなく、爆発事故の危険も…(画像はイメージ)

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ガスボンベやライターなどに封入されたガスを吸う、いわゆる「ガスパン遊び」が中高生の間で流行し、死亡事故も起こっている。

ガスを吸い続けると軽い酸欠状態となり、脳が一時的に麻痺する。シンナーなどと同じく、そんな「酩酊状態」で生じる爽快感を味わうための行為だ。ただ、シンナーと違い法規制が進んでいなかったためか、その存在は1990年頃から知られていた。

「笑気ガス」は歯医者でも使われる

「ガスパン遊び」の名前は、シンナーの隠語「アンパン」に由来している。使われるガスは主に、「シバガス」「笑気ガス」とも呼ばれる亜酸化窒素(一酸化二窒素)と、燃料ガスボンベやライター、制汗スプレーの中に封入されるブタンガスの2種類だ。

笑気ガスは歯科医院で精神鎮静剤、麻酔薬として、ブタンガスは主に燃料として使われる。いずれも吸い込むと軽度の酸欠状態となり、一時的に陶酔感やリラックスした感覚に襲われる。ただ、長い時間吸い続けると幻覚や幻聴を生じ、最悪の場合、脳への重い障害を負ったり、窒息死したりする可能性もある。

「ガスパン遊び」は、シンナーが法規制された後の1990年頃から中高生の間で流行りだし、およそ20年後の2010年代にも、健康被害や引火による爆発事故を起こしている。

15年11月7日には栃木県足利市の公園でガスライター用のボンベのガスを吸引して遊んでいた男子高校生1人が倒れ、搬送先の病院で死亡が確認された。11年1月には、通信制の私立高校に通う少年2人がガスボンベ吸引のため、東京都大田区にあるマンションの室内にガスを充満させ、たばこの火に引火させる爆発を引き起こした。2人は全身やけどの重傷を負った。

相次ぐ事故を受け、ツイッターなどでは、

「まだやってる奴がいたのか。」
「昭和で終わったんじゃなかったのか」

といった驚きの声が上がっている。

イギリスでも「ガスパン遊び」流行る

流行の背景には、「ガスパン遊び」に使うガス類の使用を取り締まる法令が今のところ整備されていない、ということがあるようだ。

2014年から所持、購入(譲渡)、使用の禁止が当時の薬事法(現医薬品医療機器法)で定められた危険ドラッグや主成分のトルエンが毒劇物取締法の指定成分となっているシンナーと違い、ライターや制汗スプレー、燃料ガスボンベのガスは吸引しても法律違反に当たらない。それに加え、これらの製品はホームセンターやネット通販などで簡単に入手できる。

「ガスパン遊び」は海外でも広がっている。イギリスでは、ここ数年の間に死亡者も続出。イギリスの地方自治体も14年に警告情報を出し、笑気ガスの乱用防止に取り組んでいる。

相次ぐ国内事故と海外での流行。そうした状況を鑑みてか、笑気ガスについては日本でも規制が進む。厚労省は15年9月末、医薬品医療機器法にもとづき、販売業者への取り締まりを強化するよう各都道府県に通知した。全国の県警も、ホームページやツイッターアカウントなどで購入を控えるよう呼びかけている。