■特集 スポーツの秋、食の秋(1)

JRA(日本中央競馬会)の騎手免許を取得して、今年から日本を主戦場としているミルコ・デムーロ騎手。競馬においては、すでに多くの勝ち星を重ね、ビッグレースのタイトルを手にするなど、素晴らしい活躍を見せている。一方で、日本での生活はどうなのか。とりわけ、食生活において苦労はないのか、話を聞いてみた――。

 日本の食べ物ですか? すごい、大好き! 何でも食べますよ。

 なかでも、納豆が大好き! 週末、競馬開催日の前日に調整ルーム(※)に入るときは、その前にコンビニエンスストアに寄って、必ず納豆を買ってから行きます。だから、納豆は毎週、食べています。その姿を見て、ユタカさん(武豊騎手)がいつも不思議そうな顔で見ていますね(笑)。
※各競馬場、栗東、美浦の両トレーニングセンターにある騎手の宿泊施設。競馬の公正の確保、また騎手が心身の調整を図る目的として、競馬開催日の前日には、騎乗予定の騎手全員が入室することを義務付けられている。

 もちろん、初めて納豆を食べたときは、おかしな味がして「何、これ?」って思いましたよ。でも、イタリアに帰った際、あるとき急に「納豆が食べたい」って思ったんです。それから、あの味がすっかりクセになってしまいましたね(笑)。

 苦手なものはあまりないけど、強いて挙げれば、わさび、かな。刺身は大好きだけど、わさびのつけ過ぎは辛いからダメね。ツーンときます(笑)。

 お酒も、何でも飲みますよ。実は、初めて日本に来たときは、まったく飲めなかったんですよ。でも、日本の人たちはみんな、競馬が終わると「ビール、ビール」って言って、盛り上がるでしょ。それにつられて、ちょっとずつ飲んでいるうちに、すっかりお酒が好きになってしまいました。

 ビールはもちろん、日本酒、焼酎、ワイン......何でもオーケーです。大きなレースを勝って、祝杯を挙げるときは、やっぱりシャンパンですね。

 ただ、ボクはお酒に弱い(笑)。すぐに酔っ払ってしまいます。それでも、朝まで付き合ったりするよ。飲み会の雰囲気は好きだからね。

 競馬の前の『勝負メシ』? そういうのは、特にないかなぁ。明日、何かがあるから、これを食べよう、という習慣もないですね。

 ボクの場合、大事なのは、いつも今の自分の体調ね。それは、自分の感覚でわかるもので、炭水化物が足りていないと思えば、それを補給するし、あぶらが足りていないと思えば、肉とかあぶら分の多いものを食べたりします。だから、レースの前は毎回、食べるものが違います。

 もともと体が小さいから、減量の苦労というのもないです。そうは言っても、きちんと管理はしていますよ。食事をとるのは、1日に1回だけですから。

 朝はコーヒー。昼はコーヒーとクッキー。たまに、リンゴを食べます。それで、夜だけはしっかりと食べます。好きなものを、好きなだけ食べますね。

 朝からずっと食べないで、「よくお腹がすかないね?」って聞かれたりすることがあるけど、それももう「used to it」ね。もう「慣れた」ってこと。だから、昼間のうちに「お腹がすいた」って思ったことはありません。

 ああ、そうそう、日本の食事で残念なことが、ひとつだけあります。それは、イタリアン。

 みんなが「美味しい」っていう店はいっぱいあるけど、ボクからすると、どこも美味しくない。やっぱり、本場イタリアとは"テイスト"が違うような気がする。

 つまり"ジャパニーズ・イタリアン"。日本人向けの味付けで、日本人には美味しいかもしれないけど、(イタリア人の)ボクの口には合わない。いつか、本当に美味しいイタリアンの店が、日本にもできればいいなって思っているよ。

新山藍朗●構成 text by Niiyama Airo