高松商vs明徳義塾

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確信の「足攻」。高松商、26年ぶり秋の四国を極める!

完投した高松商・浦 大輝(2年)

 以前に高松商・長尾 健司監督に取材した際、こんな話を聴かせていただいたことがある。

「僕は野球マニアなんです。(2014年4月に)高松商の監督になる前から香川大会や甲子園の試合は全部録画してありますし、野球の本やDVDも暇があれば見ている。自宅にはまだ見きれていないDVDや本がたくさんあります」

 これまで丸亀市立飯山中、香川大学付属坂出中などで軟式野球部を指導していた際も技術指導に加え、相手の特徴をつかみ、勝利への方策を導き出す戦略家の側面も併せ持っていた知将。はたして、この明徳義塾戦でも「抑えられる術がないので思い切りやる」から、わずか16時間足らずで具体的な戦い方を決めてきた。

 それは「持っているのに使わない手はない」盗塁を有効に使うこと。しかも裏付けもしっかりしている。では、長尾監督の弁を聴こう。

「中野(恭順・2年・投手・右投右打・172センチ68キロ・えひめ西リトルシニア出身)君は投球に集中したいタイプなので、けん制もあまりしてこないし、けん制もしつこくしない。だから『行ける』と思っていました」

 2回裏一死から左前打で出塁した50メートル走6.0秒の5番・美濃 晃成(2年・二塁手・右投左打・170センチ64キロ・高松市立古高松中出身)が高松商「足攻」の先鋒となった。

「前日に監督からも話があったし、選手間でビデオを見てもクイックが遅かった」ことを確認した美濃は二死から7番・植田 理久都(1年・一塁手・177センチ79キロ・東かがわリトルシニア出身)の1球目で迷いなく二塁へスタート。「昨日の済美戦を見て足があることを警戒はしていた」古賀 優大(2年・捕手・178センチ78キロ・右投右投・友愛クラブ<フレッシュリーグ・福岡県>出身)も、これには虚を突かれ悠々と二盗を許した。そして植田 理は4球目を左前に。本来、明徳義塾にとって入るはずのなかった1点がここに刻まれる。

米麦 圭造(2年主将)を先頭にダイヤモンドを一周する高松商の選手たち

 動揺を隠せない明徳義塾バッテリーに対し、高松商は執拗に穴を突く。続く3回表には一死一・三塁から4番・植田 響介(2年・捕手・右投右打・180センチ80キロ・東かがわ市立白鳥中出身)の右犠飛で追加点を得ると残った一走の50メートル走6秒2・米麦 圭造(2年主将・遊撃手・右投右打・177センチ73キロ・東かがわ市立白鳥中出身)が二盗、さらに古賀の送球は無人の二塁ベース上を通過し米麦は三塁へ。

 さらに死球で出塁した美濃 晃成も二盗。この回は追加点こそなかったが「脚力負け」と馬淵 史郎監督も認めざるをえない3盗塁で、四国高校野球の盟主は完全にペースを見失ってしまった。

 そして3対1・高松商リードで迎えた5回表一死一、二塁。試合を決める一打が生まれる。「インコース低めにストレートにつなごうと思って反応した」高松商5番・美濃の打球は弾丸ライナーでそのままライトポール際芝生席へ飛び込む大会10号。米麦12本塁打、植田 響介15本塁打、そして美濃13本塁打の高校通算本塁打二桁トリオの力を見せ付ける3ランで、試合の趨勢はほぼ決する。

 かくして12時8分、連投の高松商エース・浦 大輝(2年・右投右打・179センチキ78キロ・香川県立高松北中出身)が147球目で6個目の三振を奪った瞬間、秋季四国大会の王者は26年ぶり8度目・香川県立高松商の頭上に輝いた。

 そして「緑に映ゆる 紫雲山」ではじまるこの秋8度目の校歌を歌う選手20人、犬伏 英人部長、長尾監督、香川 桃子記録員(2年) 、スタンドの現役部員、ご父兄、関係者、OBたち。その高らかな歌声はまるで風に乗って鳴門海峡大橋を越え、淡路島を渡り、20年ぶりに甲子園の銀傘へ響き渡る2016年春へ向かうための、彼らの決意を示す序曲のようであった。

(文=寺下 友徳)

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