ティーチインを行った松永大司監督

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 手塚治虫さんが死の直前までつづっていた病床日記に着想を得たオリジナル作品「トイレのピエタ」が10月29日、第28回東京国際映画祭のJapan Now部門で上映され、メガホンをとった松永大司監督が東京・新宿ピカデリーでティーチインに臨んだ。

 本作のストーリー、そして演出の両面において鍵となるのが、死後、十字架から降ろされたキリストを母マリアが抱く姿を描いた芸術作品「ピエタ」。松永監督は、「ピエタは多くの芸術家が作っているが、僕が影響を受けたのはミケランジェロのピエタ」と告白する。その理由を、「他の方が作ったものとは表情が異なる。表情がすごく豊かで、悲しい顔をしていない」と説明。そのうえで、「穏やかな顔で死んでしまった自分の子どもを抱くってどういうことなんだろうと疑問を持った。その答えを映画を通して見つけてみたいと思った」と明かした。

 さらにミケランジェロのピエタは、演出でも多大な影響を与えている。ミケランジェロは20代で完璧なピエタを完成させていながら、以後3体のピエタを制作。松永監督はこれを例に挙げ、「ミケランジェロが最後に作ったピエタは、すごくいびつ。単純に形として捉えると、完成していない不完全なもの」であるとし、そのうえで「だから主人公が最後に描く絵は、荒々しく不完全なものにしたかった」と語る。

 だが、これを実現するのは困難を極めた。松永監督は、「絵を描いてくれた人には“こういう絵を描こうとしている”と予想できる絵にはしたくない。何を描くか分からないけれど、衝動のなかで描いていく絵にしたいと要求した。ラフも何回も見せてもらった。この部分では、だいぶわがままを言いました」と述懐。こだわりはこれだけには留まらず、納得いく絵を描くため「トイレを何個も作りました。キャンバスとして(笑)。最初、中盤、最後で大きさも変えて、いくつも作りました」と明かすと、客席からは「おおー!」という驚きの声と、笑い声があがっていた。

 ロックバンド「RADWIMPS」やソロ活動「illion」で活躍する野田洋次郎の映画初主演作。余命3カ月を宣告された青年が、偶然知り合った少女との交流を通して、生きる喜びや輝きを見出していく姿を描いた。