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●業界3位からの巻き返し
既報の通り、エレコムはコンシューマー向けハイエンドルーター製品「WRC-2533GXBK」「WRC-1900GXBK」「WRC-1267GXBK」を発表し、2016年2月から販売を開始する。また、法人向けNASもラインナップも35モデルを一気に投入。ルーターの詳細スペックは別記事「エレコム、デュアルCPU搭載のフラッグシップ無線LANルーター - 最大1,733Mbps」を参照いただくとして、ここでは発表会の内容をお伝えする。

まずはエレコムの葉田社長が簡単にスピーチ。現在、エレコムグループとしてIoT関連に力を入れていて、今回はネットワーク製品の開発が間に合ったので発表会を開いたとした。続いて常務取締役の梶浦氏が、グループ企業のロジテック、ハギワラ、JDSを通じて、エンベデッドやIoT、新設立したELECOM Healthcareでヘルスケアや医療、SkyLink Mobileで通信サービスと、将来の成長分野への布石を行っていることを紹介。

こうした分野で成長の核となるのはネットワーク機器であり、今回は家庭ネットワークの中心となるルーターと、企業で活躍するNASを一気に発表する。一方で、ネットワーク製品に強い国内の某社は、DASやネットワークの売り上げが全体の68%におよぶ。NASの売り上げにおいては、エレコムの実に23倍と、大きな差が。この状況を変えるべく、エレコムは「87」ものSKU(製品の種類)を投入する。

●市場が求めているのは「技術的優位性と新規格」
ルーター製品の方向性に関しては、開発担当の門脇氏が説明した。家庭用の無線LANルーターは年間270万台とかなりの有望市場だが、エレコムは現在3位の地位。シェア上位の企業とエレコムの戦略を比較した結果、エレコム製品は技術的な優位性に乏しいことがわかったという(リーズナブルな価格設定のため、高性能パーツを使うことができない)。

そこで新製品では、高性能パーツをふんだんに使用。技術的に優位な製品を投入することを決意し、トップシェア企業に挑むと述べた。

具体的な製品の詳細に関しては、開発担当の二光氏が説明。新製品となるGXシリーズは、IEEE802.11acの速度が異なる3モデルを投入(4x4MIMOの2533Mbps、3x3MIMOの1900Mbps、2x2MIMOの1267Mbps)。速度面だけでなく、「家電のIoT化」で対応が望まれる「Alljoyn Notification」、メディアサーバー機能を、VPNを用いて遠隔地でも利用できるようになる。

そして、Qualcomm社の新世代プロセッサ「Akronite(IPQ8062/64)」を採用。Akroniteは、デュアルコアCPUに加えて、デュアルコアのNetwork Acccelaratorと暗号化エンジンを搭載。さらに、コンテンツに応じてネットワークの優先度を変更するQualcom StremaBoostが利用できる。

スマートフォンのセットアップツール「SkyLink Setup」には、ビデオチュートリアルを採用して、わかりやすさに努めた。加えて、SSIDとパスワードをワンタッチで乱数作成して安全性を高める「かんたんSSID」、2.4GHz帯と5GHz帯のうち空いている(転送速度が期待できる)帯域へと自動切替を行う「無線LANスイスイナビ」を搭載した。

●企業向けNAS製品も一挙にリリース
発表会では、企業向けのNAS製品も紹介された。必要な機能とスペックを備えたNAS「NetStor」と「DataStor」に関して、概要を門脇氏、詳細を二松氏が説明。

新製品では、NAS向けのHDDとしてウエスタンデジタルのWD RedとWD Red Proを全面的に採用し、安定性を高めた。基板上の全部品に関して、40℃で5年動作するグレードの部品を採用している。もちろん、豊富なバックアップ手段、レプリケーション、AD連携など、企業向けに必要な機能も盛り込んだ。

サポート体制に関しては、開発担当の日隅氏が解説。基本3年の保証だが、一般企業での利用期間とリース契約を考えて5年に延長できる。そのほか、オンサイト、デリバリー、センドバック保守に加えて、販売店が独自の保守サービスを展開できる「自営保守」を追加しているのがユニークな取り組みだ。エレコムはパーツ供給やエンジニア派遣、トレーニングなどを行う。現在は20社ほどと協議している最中だという。

また、店舗に対するハンズオントレーニングや自社社員によるサポートセンターの開設も進行中だ。開発部隊と直結したフィールドエンジニアが調査を行い、問題の迅速な解決と次世代製品に向けたフィードバックも進めている。NAS製品は1ベイと2ベイのエントリ製品が2015年の年末までに、それ以外の製品は2016年2月から順次発売の予定だ。

(小林哲雄)