かつて清水、磐田に在籍した日本代表クラスの静岡県出身選手は、大半が少年サッカー、高校サッカーから生まれた選手だ。言ってみれば、学校社会に育てられた選手だった。Jリーグが発足して10年間、両チームはその財産に頼ってきた。その間、選手を自前で育てることができなかった。同時に高校サッカーも弱体化した。高校サッカー選手権でも、静岡の代表はすっかり勝てない状態が続いている。学校系も、クラブ系も育成はパッとしない。まさに共倒れの状態にある。

 それまで学校主導できた育成が、Jリーグの誕生を機にどっちつかずの状態になった。選手、指導者、そしてファンも目指すものが中途半端。高校サッカー選手権におけるかつての栄光が徒になっている。そんな感じに見える。

 現在の不振の原因は23年前に遡る。僕はそう思う。Jリーグが誕生してから清水及び静岡のサッカーは、その流れに乗り遅れたのだ、と。Jリーグが誕生する前の方が、遙かに画期的だった。

 メディア報道もしかり。かつての方がサッカーにうるさかった。さすが静岡。サッカー王国に相応しい、東京のメディアにはない鋭い指摘が目に付いたが、Jリーグ誕生を機に、すっかり他と同じような、応援報道になってしまった。その23年間の負の蓄積が、現在の姿だと思う。気候に恵まれたのんびりとした気質だから。と言うのは、知人の静岡県人の話だが、気候に恵まれたのんびりとした気質でも、世界にはサッカーが強い地域はいくらでもある。スペインなどはその最たる存在だ。言い訳として、それは弱い。

 清水エスパルス、ジュビロ磐田の成績よりも、まず注目すべきは、よい選手の数だ。優れた若手をどれほど育てられるか。これは、学校を含めた静岡県全体の問題だと思う。県そのものに勢いがない。パワーがない。

 オランダの復調が早いか。清水、静岡の復調が早いか。ともに深刻度の高い問題であることは間違いない。