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安倍首相のポスターに口ひげなどの落書きをするいたずらがあいついだ事件で、警視庁は9月下旬、71歳の男性を器物損壊罪の容疑で逮捕した。

報道によると、男性は東京・町田の路上で、安倍首相のポスターに黒い油性ペンで、ヒゲのようなものを落書きした疑いがもたれている。男性は調べに対し、「今の政治に対し、やむを得ずやった」と容疑を認めているという。

ネット上では、「公共の場での落書きは許されない」として、「逮捕は当然」という意見がある一方で、「見せしめだ」「表現の自由の侵害だ」という声もあがっている。

落書きが犯罪にあたるとしても、そこに政治的主張が含まれている場合でも、結論は変わらないのだろうか。村上英樹弁護士に聞いた。

●「ポスター」を台無しにする落書きは「損壊」にあたる

「器物損壊罪の『損壊』とは、『物の本来の効用を失わせること』を言います。

『器物』であるポスターを破る等の行為だけではなく、落書きなどをして、事実上もしくは感情上その物を本来の用途に従って使用できなくすることも、『損壊』に含まれるとされています。

要するに、ポスターを台無しにする行為であれば器物損壊罪にあたるので、顔に落書きをして使い物にならなくしてしまえば、器物損壊罪にあたります」

村上弁護士はこのように述べる。「政治的主張のため」という意図は、影響しないのだろうか。

「形式的には罪に当たっても、場合によっては『違法性阻却』と言って違法にならない場合があります。

たとえば、正当防衛などのほか、法令によって許される場合や、正当業務行為(職務上許される場合やスポーツのルールに則り行われる場合)などの場合です。

しかし、ポスターへの落書きの場合、その人の意図として政治的理由があったとしても、『違法性阻却』の理由にあたるとは考えられません」

●他人の権利を侵害して「表現」することは認められていない

「一つの表現行為と言えるかもしれませんが、だからといってポスターに落書きをして良いというだけの正当化の理由はありません。

表現の自由は憲法21条で保障されているといっても、公共の福祉(憲法12条、13条)による制約があり、他人の権利を侵してまで表現することが認められているわけではないのです。

したがって、落書きが本人にとっての政治的表現だとしても、器物損壊罪にはあたります。

政治的主張をするのであれば、文書やインターネット等で表現することや、政治家に陳情をすること、また、集会やデモに参加するなど、社会のルールに則った方法があります。

このような方法であれば、積極的に政治に関して意思を表明することは、主権者として立派な態度だと言えます。

しかし、そのような方法ではなく、犯罪に当たる行為によって表現してしまったというならば大変残念というほかありません」

村上弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
村上 英樹(むらかみ・ひでき)弁護士
主に民事事件、家事事件(相続、離婚など)、倒産事件を取り扱い、最近では、交通事故、労働災害、投資被害、医療過誤事件を取り扱うことが多い。法律問題そのものだけでなく、世の中で起こることそのほかの思いをブログで発信している。
事務所名:神戸シーサイド法律事務所
事務所URL:http://www.kobeseaside-lawoffice.com