明日開幕!どこよりも詳しいインディアン・スーパーリーグ(2015年版)

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ついに10月3日に迫った2015年度インディアン・スーパーリーグの開幕。

昨季はレギュラーシーズンをマルコ・マテラッツィ率いるチェンナイインFCが制覇したものの、決勝大会ではアトレティコ・マドリーが資本参加しているアトレティコ・デ・コルカタが快進撃。

FCゴア、そしてチェンナイインを準決勝で破ったケララ・ブラスターズを立て続けに撃破し、初代チャンピオンに輝いた。

昨年は最初のシーズンということもあって突貫工事のようなバタバタしたところもあったが、今年は準備もスムーズに進み、外国人選手も早めに揃った。

この記念すべき2年目のシーズンについてもQolyは解説していこう。なお基本的なところは昨年の記事も参照して欲しい


インディアン・スーパーリーグ の なりたち

まず抑えておきたいのは、インディアン・スーパーリーグはインドサッカー協会のトップリーグではないと言うことだ。

インドにはIリーグという国内のコンペティションが存在しているが、それとは別に行われている商業的な大会がこのスーパーリーグである。

サッカーを盛り上げるため、協会が国内企業のレリアンス・インダストリーズ、アメリカ企業のIMGと15年の契約を結んだのが2010年。

インドらしくそれから数回の延期を経て、ようやく開幕にこぎ着けたのが2014年10月12日であった。

数多くの有名選手を集めて行われたリーグは平均観客数2万5000人近くを記録し、放映権も海外に販売することに成功している。

各クラブが黒字になるところまでは行っていないようだが、新しいリーグのスタートとしては大成功を収めたと言っても良いだろう。

インディアン・スーパーリーグ の きほん

このリーグは非常に特徴的なシステムを採用しており、それは大雑把に分けて4つある。

10月〜12月の3ヶ月間だけ行われる短期決戦 曜日は関係なく1日1試合のペースで開催される インド人選手はドラフトで各チームに分配される 各チーム1名のスター選手、8名の外国人選手の獲得が義務づけられている

スケジュールに関しては非常に特殊で、曜日に全く関係なく1日1試合を夜に行う。これによって試合が被ることを避け、試合の放映を容易にし、話題を継続させやすいというメリットを得ているのだ。

デメリットとしては順位表の意味が薄れることやスケジュールの不公平感、スタジアムを訪れる観客が混乱することがあげられるだろうが、今のところ大きな問題にはなっていない。

選手については昨年もアレッサンドロ・デル・ピエロがスター選手枠(通称マーキー・プレイヤー)で加入したことで大きな話題を集めたが、今年もそれは継続されている。ワールドカップ出場経験がある選手、そして外国人の獲得は義務であり、契約しないわけにはいかない。海外へのマーケティングを考慮し、インド人だけで戦うというのは不可能なのである。

なにが かわったの? 2015年のスーパーリーグ 

去年から今年にかけての大きな変更点と言えば、スケジュール面の改善だ。

昨季は開幕時期も直前にならないと分からないような状況で予定が遅れ、シーズン中に「ダブリ(2試合を行わなければならない日)」がいくつかあった。

しかし今季は組織が固まっていることもあって、スケジュールは10日間前倒し(10月13日→10月3日)となり、「ダブリ」の日は一つもなくなった。

試合の間隔も昨年より空いているため、経済的なものだけでなく、ピッチ内にも大きな影響があると予想されている。

また、マーキー・プレイヤーの部分についても、スケジュールの影響は大きいはずだ。

昨年はスター選手の契約がギリギリまで遅れ、その結果ブランクが長かったロベール・ピレスやフレーデリク・ユングベリは全くの期待外れに終わってしまった。反面、現役中のエラーノは得点王に輝いている。

それが今回マーキーの契約期限が7月31日に設定され、早い間に陣容が決定された。さらに開幕前にも長い準備期間が与えられ、ジーコ率いるFCゴアはドバイで2週間のキャンプを行っている。

つまり、より「プロフェッショナルな」リーグになったとも言えるのではないか。

アトレティコ・コルカタ

昨季はレギュラーシーズンで3位となったが、決勝大会で優勝。初代スーパーリーグのチャンピオンとなった。

名前の通りリーガ・エスパニョーラのアトレティコ・マドリーが経営に参画しているクラブとして知られている。

本拠地がかつて12万人を収容していたソルトレイク・スタジアム(現在は6万8000人まで)であるためか、フランチャイズ権の落札額が8チーム中最高値だった。

彼らの今回の注目は、なんと言っても和泉新選手の加入だ。日本で生まれ、2013年にインドに帰化した彼がついにスーパーリーグにやってきた!

昨年の優勝監督アントニオ・ロペス氏はもちろん留任。マーキーにもポスティガという名FWを加えたわけで、今季も強豪になりそうだ。

ちなみに、オーナーグループにはクリケットの大スターであったソウラヴ・ガングリーも参画している。

監督:アントニオ・ロペス(スペイン)

マーキー:エウデル・ポスティガ(ポルトガル代表FW)

注目選手:ホセミ、ボルハ、ハイメ・ガビラン(スペイン)、和泉新(インド)、サミーフ・ドウティ(南アフリカ)

ケララ・ブラスターズ

昨季はレギュラーシーズンで4位とギリギリだったが、決勝大会1回戦で首位だったチェンナイインFCを撃破し、準優勝に輝いた。レギュラーシーズンでは14試合戦って9点しか取っていないのに、決勝大会3試合で4ゴールという勝負強さがスゴかった。

破産した「死神」デイヴィッド・ジェームズを選手兼監督で雇い入れるという思い切った選択が吉と出た…ほどの内容でもなかった気もするが、ともかく結果は出たわけである。

明らかに勝負に出た昨季と違い、今季は非常に堅実。マーキーがカルロス・マルチェナという所からもう実用主義が見て取れる。

有名な選手と言えば元ニューカッスルのピーター・ラメイジ、ウェストハムの印象が強いGKスティーヴン・バイウォーターくらいであろうか。コアなアーセナルファンならサンチェス・ワットも覚えているかもしれない。

もしかしたら、かつてイングランド代表を暫定的に率いたこともあるピーター・テイラー監督が一番有名なのかもしれない。攻撃にタレントがほとんどいないチームをどうやって上位に持っていくか?采配にも注目だ。

ちなみにオーナーグループにはこちらもクリケットのスター、サチン・テンドルカールが入っている。

監督:ピーター・テイラー(イングランド)

マーキー:カルロス・マルチェナ(元スペイン代表MF)

注目選手:ジョアン・コインブラ(ポルトガル)、ピーター・ラメイジ、スティーヴン・バイウォーター(イングランド)

チェンナイインFC

我らが「兄貴」ことマルコ・マテラッツィが選手兼監督として率いたクラブ。昨年はブラジル代表MFエラーノが大爆発しリーグ優勝を飾ったが、まさかの決勝大会1回戦敗北で悲しい結果に。

結果を残したマテ兄貴は留任したが、選手としては登録されず指揮に専念することになった。今季は優勝候補の一角として戦うことになる。

なにせ、昨季活躍したエラーノがまた所属してくれる上、アトレティコ・コルカタのチーム得点王だったエチオピア代表FWフィクル・テフェーラを引き抜いちゃったのだから当然だ。

アレッサンドロ・ポテンツァ、マヌエレ・ブラージとマテ兄貴の旧知の選手も加入し、実力としてもおそらくスーパーリーグ最高レベルになったはず。唯一、GKがいつまで経っても安定しないアプラ・エデルであることだけが心配である。

なお、ここのオーナーグループにはクリケットのスターであるマヒンドラ・シン・ドニに加え、ボリウッド俳優のアビシェーク・バッチャンが入っている。

監督:マルコ・マテラッツィ(元イタリア代表DF)

マーキー:エラーノ(元ブラジル代表MF)

注目選手:ベルナール・メンディ(元フランス代表DF)、フィクル・テフェーラ(エチオピア代表FW)、アレッサンドロ・ポテンツァ、マヌエレ・ブラージ(イタリア)

FCゴア

鹿島アントラーズの神様ことジーコが監督を務めているクラブ。昨季はロベール・ピレスがぱっとしない中でレギュラーシーズン2位と素晴らしい結果を残したのだが、決勝大会1回戦で敗れた。

昨季を思い出せば、選手はチェコ代表がいたりでジーコの意向を感じられなかったのだが、今回はそれとは一変している。

マーキーには元ブラジル代表DFルシオを獲得し、それ以外にもかつて柏レイソルやジェフ千葉でプレーしたレイナウド、マルセイユにもいた名GKエリントン・アンドラーデ、フラメンゴの伝説的選手レオ・モウラが来ている。

また、日本ではあまり知名度は高くはないが、アル・アハリ(サウジアラビア)でめざましい活躍をした左利きのFWヴィクトル・シモンエスが入った。彼のポテンシャルは得点王になれるだけのものが十分にある。

なお、ここのオーナーグループは地元の企業家のコンソーシアムであり、あまり面白みはない。

監督:ジーコ(元ブラジル代表MF)

マーキー:ルシオ(元ブラジル代表DF)

注目選手:ヴィクトル・シモンエス、レイナウド、エリントン・アンドラーデ(ブラジル)、ジョフレ(スペイン)

デリー・ダイナモス

昨季はアレッサンドロ・デル・ピエロが所属したことで非常に話題を集めたクラブ。ただ彼もあまり活躍したとは言えず、惜しくも勝ち点1差で決勝大会出場を逃した。

インド国内では最大のケーブルTVネットワークであるDENがオーナーを務めている。オランダのフェイエノールトも関わっていたが、昨年限りで経営から離れている。

今夏は会長の変更に加え、選手兼監督としてあの「悪魔の左足」で知られる元ブラジル代表DFロベルト・カルロス氏を招へいした。

動きはあまり速くなかったが、ここからの加速はスゴかった。元ノルウェー代表DFヨン・アルネ・リーセ、元フランス代表MFフロラン・マルダを獲得。また、WBAから将来を嘱望される21歳のFWアディル・ナビまで引き入れてきた。

昨年のコネクションが残っているのか、オランダのハンス・ムルダーが引き続き参加し、かつてRKCとフェイエノールトで少し話題になったセルジーニョ・フレーネも加入。選手の名前は比較的揃っている。

リーセ+マルダ+監督と左サイドが3人いるということは、おそらくマルダはボランチに入りそうだ。

監督:ロベルト・カルロス(元ブラジル代表DF)

マーキー:ロベルト・カルロス(元ブラジル代表DF)

注目選手:フロラン・マルダ(元フランス代表MF)、ヨン・アルネ・リーセ(元ノルウェー代表DF)、アディル・ナビ(イングランド)、ハンス・ムルダー(オランダ)

プネ・シティ

フィオレンティーナが経営に参加していたこともあり、イタリアとのコネクションが強いクラブ……だった。

昨季は中村俊輔選手を指導したことでも知られるフランコ・コロンバ氏を迎えたが結果が出ず、今季はいきなりイングランド方面のコネクションが加わった感じである。

今季行った補強は非常に強力で、優勝候補の一角になる可能性は高い。ディディエ・ゾコラ(コートジボワール)、カル・ウチェ(ナイジェリア)、トゥンジャイ・シャンル(トルコ)はいずれも代表クラスの選手。

DFに迎えたディエゴ・コロットはスペインで実績を持つ選手であり、オランダ人FWウェスリー・フェルフークもADOデンハーグの名アタッカーだ。ニッキー・ショーリーは一時期イングランド代表にも入っていたことで知られるレフトバックである。

問題はマーキー・プレイヤーとして迎えた元ルーマニア代表FWアドリアン・ムトゥがブランクから復活し、活躍出来るのかどうかだ。

監督:デイヴィッド・プラット(イングランド)

マーキー:アドリアン・ムトゥ(元ルーマニア代表FW)

注目選手:カル・ウチェ(元ナイジェリア代表FW)、ディディエ・ゾコラ(コートジボワール代表MF)、トゥンジャイ・シャンル(トルコ代表FW)、イェンドリック・ルイス(コスタリカ代表FW)

ムンバイ・シティ

昨年はフレーデリク・ユングベリを獲得したものの、彼が全くといって良いほど役に立たず、チームも7位に沈んでしまった。

しかし、今季のムンバイ・シティは上手く戦力を整えた。補強はかなり現実的に行っている。

マーキー・プレイヤーは昨季に続いてニコラ・アネルカ。今季はそれに加えて監督としてチームを率いる。2ゴールを上げた昨年以上の活躍が期待されるが、ブランクが大きいので指揮が中心になるかもしれない。

新たに加わったのは元フランス代表FWフレデリック・ピキオンヌ、元チュニジア代表の司令塔サリム・ベナシュール、セルティック時代の中村俊輔の同僚であるCBダレン・オデイなどだ。

知名度は高くはないが、インド代表の絶対的エースであるスニル・チェトリの加入、昨年リーグで唯一のハットトリックを決めたアンドレ・モリッツの残留も力になるだろう。

優勝できるほどの実力をつけたとまでは言いがたいが、決勝大会出場を争えるだけの基盤はあると言える。

監督:ニコラ・アネルカ(元フランス代表FW)

マーキー:ニコラ・アネルカ(元フランス代表FW)

注目選手:スニル・チェトリ、スブラタ・ポール(インド代表)、アンドレ・モリッツ(ブラジル)、サリム・ベナシュール(元チュニジア代表)、フレデリック・ピキオンヌ(元フランス代表FW)

ノースイースト・ユナイテッド

ボリウッド俳優のジョン・エイブラハムがオーナーを務めるクラブ。インド北東部の8地域をフランチャイズしているため、名前に全く地域性がない。東北ユナイテッドというと日本のクラブのようだ。

昨年はFC岐阜に所属していたド・ドンヒョンが所属するなど渋い補強を行い、あまり上手くいかずに最下位に転落。その反省を生かしてか、今季はかなり派手な補強も行ってきた。

マーキー・プレイヤーにはポルトガル代表の名ウイングであるシモン・サブローサを獲得。攻撃陣にはさらにポルトガル国内の名指令塔シラス、元コートジボワール代表FWブバカル・サノゴ、元セネガル代表FWディオマンシ・カマラを引き入れた。

さらに昨年のシンガポール最優秀若手選手賞を獲得したアルゼンチン人FWニコラス・ベレスとも契約しており、昨年とは一線を画した豪華っぷり。

守備陣には昨年から引き続いてフランスからGKジェンナーロ・ブラシリアーノ、DFセドリック・アングバールが参加し、元ポルトガル代表DFのミゲウ・ガルシアも加わった。

監督のセサル・ファリアス氏はベネズエラ代表を長く率いた経験を持っている指導者で、2011年にはコパ・アメリカで4位という結果を残している。

監督:セサル・ファリアス(ベネズエラ)

マーキー:シモン・サブローサ(ポルトガル代表FW)

注目選手:セドリック・アングバール、ジェンナーロ・ブラシリアーノ(フランス)、ニコラス・ベレス(アルゼンチン)、ブバカル・サノゴ(コートジボワール)、シラス(ポルトガル)


2015年版インディアン・スーパーリーグは明日10月3日についに開幕し、12月20日まで熱い戦いが行われる。シーズンのスタートは、マテラッツィ率いるチェンナイインFCと和泉新擁するアトレティコ・コルカタの好カードだ! 注目しよう。