◇今回の騒動、誰が悪いのか?


土屋:プレゼンでやるって言ったことは、どこまで実現しなくちゃいけないんですか。

玉木:プレゼン後の変更は全然あっていいこと。大体、プレゼンというのは大風呂敷をひろげるものだからね。

ザハ・ハディドの案が実現できないんじゃないの?っていうのは、1年以上前から言われていたこと。それが、政治家は「国際公約が…」って! 政治家の人は忙しいのかわからないけど、勉強しないね。

建築家から話を聞けば、あれができないってことはわかっていたはず。政治家は許可を出して後は専門家にまかせて見守ってればいいのに、どうしてか中に入って動かそうとする。

土屋:誰が悪いんですかね(笑)。

玉木:覚えてる人いるかな、一番最初に安藤忠雄さんが「デザイン募集」の告知を出したんだけど、その文言がすごいの、「これは今世紀最大級の国家プロジェクトです」って。

土屋:今世紀最大級!

玉木: その今世紀最大級の国家プロジェクトが失敗したのに、政治家が誰も責任とらないというのは恥ずかしいよね。

安藤さんも森喜朗さんも、金輪際オリンピックに関わっちゃいけないよ。

新国立競技場の話も2020年のためにやるんじゃなくて、スポーツはオリンピックがなくても続くんだし、神宮外苑はどうやったら都民のためになるのか、それを考えたらいいと思う。

土屋:神宮球場とか、他にもガタがきてるところありますもんね。

玉木:秩父宮も。あの一角をどうすべきか、みんなで考えなくちゃいけない。駒沢も同じく前回の東京オリンピックで建てたものだから、そこと連動してセットで都市計画をするべき。

土屋:だいぶ時間が経ってますもんね。

玉木:だいたい1964年の東京オリンピックの時に整備したものだから。

国立競技場はすごく歴史があって、昭和初期に「日独対抗競技」が行われたりしてね、そこで第1次スポーツブームが起こるんです。

その後戦争が始まり、学徒出陣の集まりが行われたのも国立競技場。同じ競技場で行われた東京オリンピックは、戦中を経験した人たちに希望を与えたし、戦後復興と言う意味合いも大きかった。

土屋:当時もオリンピック施設を作るのにお金かかりましたよね?

玉木:代々木の競技場も、本当は大蔵省が「予算ない、建てれない」って言ってたんだけど、当時の田中角栄が、無理にごり押しして建てた。

それは、戦後の復興という意味があったから。でもその後に、日本では「五輪疲れ」が起こって、そこから赤字国債が始まった。

土屋:当時は、採算とか考えてたんですか?

玉木:黒字とかで考えるのはなくて、ひとつの投資ですよね。国立競技場は、サッカー、ラグビー、陸上で相当使ったんですよね。

儲けとかじゃくても、みんながあれだけ使ったんだからひとつの投資ですよね。ただ、この時は「戦後の復興の象徴」だったけど、今度は何を持ってやるかってことなんです。

土屋:「体育の日」は、オリンピックの開会式を記念してできたんですよね。

玉木: そうそう。傑作なのは「スポーツの日」じゃなくて「体育の日」ってこと。スポーツと体育を同じものだと思っている。

当時の五輪は、選手も自衛隊体育学校なんかで鍛えられてて、水泳は日大の水泳部とか…「学校体育」の成果だった。

体育というのは、フィジカル・エデュケーション。体罰なんかもそれです。先生や先輩が暴力を振るうというのは、学校対抗の体育の中から出てきたことですよ。

だけど、いまはそうじゃない。サッカーや水泳、卓球もみんなクラブから出てきたもので、学校体育で育つものがなくなっている。