「キングスマン」に込められた
製作者の意図を考察する町山智浩氏

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 映画評論家の町山智浩氏が9月13日、東京・TOHOシネマズ六本木で開催されたスパイアクション「キングスマン」のトークショーに出席。劇中にちりばめられた風刺や映画で描かれている社会情勢などについて解説した。

 「キック・アス」(2010)、「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(11)のマシュー・ボーン監督がコリン・ファースを主演に迎えた本作は、ボーン監督らしい過激なアクションが話題を呼び、続編製作が話題になっている。表の顔は英ロンドンの高級仕立て屋だが、実は凄腕のスパイという裏の顔を持つハリー(ファース)の活躍と共に、同僚の遺児である青年を1人前のスパイへと育て上げていくさまが描かれる。

 町山氏は、ボーン監督がダニエル・クレイグ主演シリーズの「007」第1弾の監督候補となり、労働者階級の男がエリザベス女王のために働くスパイとなるというプロットでコンペに参加したものの、落選したという事実に言及。本作をボーン監督による同シリーズへの「復しゅう戦」であると解説する。「本作に『最近のスパイものは面白くない』というセリフが出てくるけど、最近の『007』への嫌がらせ(笑)。バーでマティーニを注文する時の『ジンベースで』『分かっているね』というやり取りも、ジェームズ・ボンドがいつもウォッカベースで注文するのを邪道だと言っている」と語る。

 さらに、映画の中で描かれる社会状況についても説明。町のチンピラ・エグジー(タロン・エガートン)がハリーによって一流のスパイへと教育されていくが、「英国の階級社会への怒り、人間は生まれではなく育ちだという思想が描かれている。原作者のマーク・ミラーはスコットランドの貧しい家庭に生まれて大学にも行けなかった。だから(同じく原作を担当した)『キック・アス』『ウォンテッド』(08)でも、恵まれない人間が憧れを手に入れる姿を描いている」と社会的なメッセージが内包されていると語った。

 また、町山氏は自身が住むアメリカでの本作に対する反応にも言及。サミュエル・L・ジャクソン演じる敵役ヴァレンタインは、アップル創業者の故スティーブ・ジョブズを一部モデルにした“西海岸”のIT長者で、エコロジスト、リベラル(自由主義)、成功してもマクドナルドが大好きといったイメージでシニカルに描かれ、一方でキリスト教右派の白人も登場し「それが英国紳士に皆殺しにされる。アメリカの右も左も『イギリス野郎が!』という思いはあると思います」と遠慮なく毒を振りまく本作の大胆不敵さについて語った。

 「キングスマン」は、公開中。