ロレンツォ・ビガス監督 Photo by Venturelli/WireImage/Getty Images

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 第72回ベネチア映画祭が9月12日(現地時間)に閉幕し、金獅子賞をベネズエラ映画の「From Afar」が受賞した。監督のロレンツォ・ビガスは、これが初長編にあたる。

 本作はカラカスを舞台に、他人と人間的な触れ合いを持てないホモセクシュアルの主人公と、街で誘われた少年のやりとりを描く。監督はミヒャエル・ハネケのファンというだけに、甘い感傷を排し、人間の本質をみつめた冷徹な視点が感じられる。南米からまたひとり新しい才能が誕生した。

 審査員大賞に輝いたのは、チャーリー・カウフマンとデユーク・ジョンソンのアニメーション「Anomalisa」。こちらもかなりシビアに人間関係をみつめた作品といえる。銀獅子監督賞はアルゼンチンの「The Clan」で、殺人や誘拐を生業にする家族の姿をパワフルに捉えたパブロ・トラぺロが受賞。最優秀女優賞にはイタリア映画「For Your Love」のバレリア・ゴリノ、最優秀男優賞には脚本賞も受賞したクリスチャン・バンサンのフランス映画「Courted」に主演したファブリス・ルキーニが輝き、ともにベテランが評価された形となった。

 一方、審査員賞はトルコのエミン・アルパーの長編2作目「Frenzy」が受賞。また新人俳優に与えられるマルチェロ・マストロヤンニ賞は、キャリー・ジョージ・フクナガの「Beasts of No Nation」で映画初出演ながら迫真の演技を見せた、ガーナ出身のアブラハム・アッタが輝いた。

 かたや評価の高かったアレクサンドル・ソクーロフの「Francofonia」、ジャオ・リャンのドキュメンタリー「Behemoth」、アモス・ギタイの「Rabin, The Last Day」は、ともに政治的なテーマで賞向けかと思われたが、すべて無冠に終わった。審査委員長のアルフォンソ・キュアロンは率直に、金獅子賞は満場一致ではなかったこと、全体的に審査員メンバーのなかで多くの議論をした上での民主的な選択になったと明かし、賞の振り分けが難しかったことを匂わせた。

 今年のコンペティションは計21本。そのなかでも、俳優賞以外は若手に光を当てる意外な受賞結果となった。(佐藤久理子)