「オーバー・フェンス」に主演する
オダギリジョー、共演の蒼井優&松田翔太

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 俳優のオダギリジョーが、故佐藤泰志さんの芥川賞候補作品を山下敦弘監督のメガホンで映画化する「オーバー・フェンス」に主演し、共演の蒼井優、松田翔太とともに、北海道・函館で撮影を敢行していたことが明らかになった。

 1990年10月に41歳で自殺した佐藤さんは、芥川賞候補の5度名を連ねているが、今作は小説家としての生活を諦めかけた時期に函館の職業訓練校で過ごした日々の経験をもとに執筆し、自身最後の芥川賞候補となった作品だ。佐藤さんの著書は、これまでに「海炭市叙景」が熊切和嘉監督、「そこのみにて光輝く」が呉美保監督によって映画化されており、両作ともに国内外の映画祭、映画賞で数多くの賞を戴冠している。

 今年は、くしくも佐藤さん没後25年という節目の年。熊切・呉両監督とは大阪芸術大学芸術学部映像学科の先輩・同期という間柄の山下監督がバトンを受け継ぎ、函館3部作の最終章と位置づけられ製作に臨んだ今作に、オダギリ、蒼井、松田という日本映画界で引っ張りだこの実力派3人が参加した。

 オダギリが演じたのは、佐藤さんの“分身”ともいえる主人公・白岩義男。妻子のためという名目で家庭を顧みなかったため妻に見限られ、故郷・函館に戻ってからは実家に顔を出さず職業訓練校に通いながら失業保険で暮らしている、という役どころだ。撮影を振り返り、「函館での1カ月は合宿のような状況だったので、この作品の事だけに集中できたし、みんなで過ごす時間は劇中の関係性を見事に反映したり、より深めたり、貴重な時間でした。信頼できるスタッフとキャストと、ともにこの作品に関われて幸せでした。愚作になるはずがないと確信しています」と話している。

 ヒロイン・田村聡(さとし)役の蒼井、白岩に興味をもつ職業訓練校生・代島和久役の松田もまた、山下監督の「その瞬間を生きている人間たちの映画にしたい」という思いに呼応し、函館の現場で役とともに生きた。“鳥になりたいと願う”風変わりなホステスを体当たりで演じきった蒼井は、「長い間、この作品に出合うことを待ち続けていたような気が、今しています。それくらい、この現場の過酷さも喜びも想像を絶するものでした。大切な仲間に出逢えたことに心の底の底から感謝します」と述懐。松田も、「こんな形もあるんだなあと驚きましたし、新鮮で真剣な山下組と共に函館で過ごした時間が、すでにかけがえのない時間となり、撮影を思い返すたび、幸せになります」とコメントを寄せた。

 映画は、故郷・函館の職業訓練校に通いながら失業保険で暮らしていた白岩は、訓練校の実習と学科対抗ソフトボール大会の練習を惰性で繰り返していた。そんななか、仲間の代島に連れられ入ったキャバクラで、鳥の動きをまねる風変わりな若いホステス・聡と出会う。函館の短い新緑の季節を舞台に、人が人を愛すること、ともに生きていきたいと願う姿を切り取った大人のラブストーリー。「オーバー・フェンス」は、2016年夏以降に東京・テアトル新宿ほか全国で公開。