「The Danish Girl」キャスト陣 写真提供:アマナイメージズ

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 イタリアで開催中の第72回ベネチア国際映画祭で9月5日(現地時間)、トム・フーパーの新作「The Danish Girl」が披露され、主演エディ・レッドメインの演技が絶賛された。

 本作は、トランスセクシュアルのパイオニアとして知られる実在の画家リリー・エルベと、その妻で画家のゲルダ・ベゲネルのストーリーを題材にしたもの。1920〜30年代のコペンハーゲンとパリを舞台に、女装に目覚め、やがて妻の支えのもと性転換に踏み切るまでのリリーの半生を描く。レッドカーペットにはフーパーをはじめ、新妻を伴ったレッドメインとゲルダ役のアリシア・ビカンダー、共演のマティアス・スーナールツ、さらにアンバー・ハードが前日に続きジョニー・デップと現れるなど、華やかな顔ぶれとなった。

 「英国王のスピーチ」で、繊細な演出によりキャラクターの心情を描いたフーパーはここでも、計算された美しいセットを背景に登場人物の感情の変化を丁寧にすくいとってみせる。難点を挙げるとすれば、映画の冒頭、リリーの女装への目覚めが早足で描かれるため、観客によっては感情的についていくのが難しいと感じるかもしれない点か。もっとも監督によれば、本作はとくにLGBTQに向けた作品というよりは、お互いを支え合う普遍的な夫婦愛の美しさと自分らしくあることの自由を謳った作品だという。批評家の評判は割れ気味だが、オスカーを獲得した「博士と彼女のセオリー」以来、再びフィジカルな役柄に挑戦したレッドメインの熱演は、満場一致の喝さいを浴びた。

 「The Danish Girl」に続きレッドカーペットを彩ったのは、ドレイク・ドレマス監督の「イコールズ(原題)」に主演したクリステン・スチュワートとニコラス・ホルト。日本でもロケをした本作は、近未来を楽観的な視点から描く。作品的な評価はいまひとつだったものの、カップルの噂もあるふたりゆえに、マスコミやファンの注目度は、デップ&ハードに勝るとも劣らないものになった。

 前半を終えたベネチアのコンペティションのなかで、現在星取表の評価がもっとも高いのは、アレクサンダー・ソクーロフの「Francofonia」。ドイツ・ナチスの将校とパリのルーブル美術館の館長が、美術品を守るために協力し合うという架空の物語だ。いつもに比べ映像的な冒険は控えめながら、比喩に富んだやり方で芸術と権力の関係を考察し、批評家受けの高い作品となった。(佐藤久理子)