ダイヤモンドバックスのルイス・ゴンザレス球団社長付補佐【写真:編集部】

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元強打者ゴンザレス社長付補佐が柳田を高評価、「どの球団も次なるイチローを探している」

 ソフトバンクの柳田悠岐外野手が8日の日本ハム戦(旭川)で30号ソロを放ち、トリプルスリー達成に大きく近づいた。ここまで打率3割6分4厘、28盗塁で、快挙までは2盗塁を残すのみ。トレードマークのフルスイングで、ヤクルト山田とともに快挙達成を確実にしている若武者はメジャーでも通用する逸材と評価されている。

 そして、日本屈指の強打者に成長した柳田の獲得に早くも興味を示しているのが、ナ・リーグ西地区のダイヤモンドバックスだ。2001年のワールドシリーズ制覇に貢献したスラッガーで、現在は球団社長付補佐を務めるルイス・ゴンザレス氏は、8月の来日中にソフトバンク戦を視察し、その実力を高く評価。「彼のプレーはエキサイティングだった」と興奮気味に話している。

 ゴンザレス氏は、デリック・ホール球団社長、米国野球殿堂入りした名投手のランディ・ジョンソン氏、そして、元カージナルス監督の名将トニー・ラルーサ野球編成最高責任者とともに来日。被災地復興の慈善活動の一環として、宮城県石巻市で子供向けのベースボールクリニックを開催し、同時に、ヤフオクドーム、マツダスタジアム、QVCマリン、東京ドームで日本プロ野球のスカウティングを行った。

 来日中は、近い将来のメジャー挑戦が噂される前田健太(広島)、大谷翔平(日本ハム)というエース級の投手の視察が話題となったが、MLBを代表する強打者として活躍したゴンザレス氏の脳裏には、1人の野手のプレーが鮮明に刻まれていた。

「野手でいうと、私は若いセンターが気に入っている。(ソフトバンクの)ナンバー9だ。左打ちだ。彼のプレーはエキサイティングだった。私にとってはいいニュースだ」

「エネルギーに溢れていて、エキサイティングな選手を求めている」

 ダイヤモンドバックス一行は、8月15日にヤフオクドームを訪れ、西武戦をチェックした。この試合で柳田は7回にタイムリーツーベースを放っている。決して大当たりという試合ではなかったが、現在の日本球界で群を抜いた存在である柳田の実力を、ゴンザレス氏は肌で感じ取ったようだ。

「どの球団も、エネルギーに溢れていて、エキサイティングな選手を求めている。そして、日本人の選手は試合の流れを読むことに長けている。状況に応じたプレーを選択ができる。そういう訓練を積んできているからだ。日本人選手がアメリカに来るときには、アメリカの選手にその準備をフォローしてもらいたいと考えているんだ。特にアメリカに来て成功する選手のね」

 このように日本人選手を高く評価するゴンザレス氏。「エネルギーに溢れていて、エキサイティングな選手」という条件は、確かに柳田のプレースタイルと合致する。

 ゴンザレス氏は、1990年にメジャーデビュー後、アストロズ、カブス、アストロズ、タイガースと渡り歩き、1999年にダイヤモンドバックスに入団。ここからスラッガーとしての素質を開花させた。

 同年はリーグ最多のシーズン206安打を放ち、打率3割3分6厘をマーク。2001年には全162試合に出場し、打率3割2分5厘、57本塁打、142打点をマークしてシルバースラッガー賞に輝いた。ワールドシリーズ第7戦でリベラから放ったサヨナラヒットは今も語り草。球団創設4年目での世界一という快挙をもたらした。オールスター選出5度を誇り、背番号20はダイヤモンドバックスの永久欠番となっている。

ホール球団社長も日本人野手を絶賛「走塁や守備のレベルも高い」

「もちろん、どの球団も次なるイチローを探しているんだ。オフェンス的にはすごく日米でスタイルが違う。投手の方がより大きなインパクトを残しやすいんだ。ジャイアンツでプレーしている青木はエキサイティングな選手だ。彼はボールを叩いて、走り出すタイプの打者だ。イチローもそういうタイプの選手だよね」

 これまでメジャーで成功を収めてきた日本人選手のタイプについて、ゴンザレス氏はこのように分析する。確かに、強打者で確かな足跡を残したのは、2009年にヤンキースでワールドシリーズMVPに輝いた松井秀喜氏くらいかもしれない。ただ、アリゾナで現在でも圧倒的な人気を誇るゴンザレス氏は、イチローや青木とはまた違うタイプの選手として、柳田がメジャーで成功できる選手と見ている。

 2012年に斎藤隆(現楽天)を獲得し、黒田や田中の争奪戦にも乗り出すなど、これまでは日本人投手の補強に力を注いできたダイヤモンドバックス。現在も補強ポイントは投手だけに、前田や大谷がターゲットとなっているが、将来的な野手の獲得にも強い興味を示している。ゴンザレス氏とともに試合を視察したホール球団社長も「アメリカで活躍できる野手のタレントは存在する」と明言する。

「日本に来るたびに強い印象を受けています。ゴンゾ(ゴンザレス)とも話しているのですが、どの選手も野球というものをしっかりと理解している。野球を知っているなという印象です。高い基礎技術。ミスが少ない。走塁や守備のレベルも高い。試合に勝つためにどんなプレーをすべきなのか、ということがしっかりと身についていますね。競争力の高さも感じます」

 さらに、ゴンザレス氏も「私もデレックと同感です。勝負の細部にまつわる部分、プロ意識の高さ、練習の部分などに感銘を受けています」と日本野球のレベルの高さを絶賛する。

 柳田はまだブレークしてから間もないとあって、メジャー挑戦については、まだ本人や球団ではなく、周囲が騒ぎ始めているという段階だ。だが、現在、日本で最高の実力を誇る野手がメジャーでどれだけのプレーを見せてくれるかを見てみたいと、多くの人が願っている。もし、将来的に柳田のメジャー挑戦が現実のものとなれば、ダイヤモンドバックスは獲得に動くことになるだろう。