まさかの非常事態となったロイヤルズ【写真:田口有史】

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ロイヤルズ主力2選手が水疱瘡で離脱

 ア・リーグ中地区を独走するカンザスシティ・ロイヤルズが、まさかの非常事態に見舞われた。鉄壁の中継ぎケルビン・ヘレラと右翼アレックス・リオスが、なんと水疱瘡に罹ってしまったというのだ。

 2人はウイルス感染から回復するまで約2週間の戦線離脱が予測されるという。9月3日現在、29試合を残して地区優勝マジックは18。2年連続でのプレーオフ進出は確実なものと思われるが、昨季のア・リーグ覇者が、目に見えない敵の恐怖に脅かされている。

 異変に気が付いたのは、タンパに遠征中の8月29日だったという。胸にいくつも赤い発疹を見つけたリオスが、チームのトレーナーに相談。トレーナーが現地の内科医の意見を仰いだところ、水疱瘡と診断された。その翌日にはヘレラが同様の症状を発症。同じく水疱瘡と診断され、2人ともそれぞれに用意されたプライベートジェットで、自宅のあるカンザスシティに強制送還されたという。

 水疱瘡といえば、子供が罹る典型的な病気の1つ。水痘・帯状疱疹ウイルスの感染によって発症し、突然の発熱とともに全身に水疱のような発疹が表れる。子供の頃に発症したり、ワクチンを打った経験を持つ人も多いだろう。だが、医療関係者によると、一度水疱瘡に罹った経験を持つ人でも、再び罹患する可能性は十分にあるそうだ。また、子供の病気を思われがちだが、大人が罹患することもあり、肺炎や脳炎、髄膜炎といった合併症を引き起こした場合、大人の方が深刻な病状に陥ることも多いという。

ロイヤルズはゴームズ獲得で対応、他球団も各選手に調査へ

 水痘・帯状疱疹ウイルスは、非常に感染力が高く、簡単に経口感染するウイルスだ。リオスからヘレラ、もしくはヘレラからリオスへ感染した可能性は高い。そこで、ロイヤルズでは選手とスタッフ全員に、これまで水疱瘡に罹った経験があるか、ワクチンを受けた経験があるか、急きょ調査を行い、さらなる感染拡大防止に取り組んだ。

 球団公式ホームページによると、先発クリス・ヤング、右腕エディンソン・ボルケス、左翼アレックス・ゴードン、外野ジョニー・ゴームズ、捕手サルバドール・ペレスは、いずれも幼少期に罹患した経験があり、現在、米国市民権取得の手続きを行っている遊撃アルシデス・エスコバルは2週間ほど前に予防接種を受けたばかりだったという。

 地元メディアに対応したデイトン・ムーアGMは「最初に報告を受けた時は、『おいおい、今は2015年だぞ』と思ったよ。水疱瘡に悩まされるなんて思ってもみなかったからね」と話したというが、おそらくこのニュースを聞いた全員が同じようなリアクションを取っただろう。

 リオスの復帰時期が見込めなかったロイヤルズは、トレード期限だった8月31日にブレーブスから外野ゴームズを獲得して対応。笑い話では済まされない影響が生じている。2選手ともに、すでに症状は回復の傾向を見せており、予測以上に早い戦列復帰の可能性はあるという。

 この一件を受けて、メジャー各球団では選手に水疱瘡罹患の有無をすぐさま確認したそうだ。今年アメリカでは各地で麻疹(はしか)の流行が確認されている。こちらも大人が感染する可能性は十分ある病気だそうだ。子供の病気だと早合点して侮ると、痛い目に遭うことになりそうだ。

■佐藤直子プロフィール

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。