実業家の顔も持つ
フェリックス・ド・ジブリ

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 ダフト・パンクら1990年代に台頭したフレンチエレクトロの黎明期を気鋭女性監督ミア・ハンセン=ラブが題材に描いた青春ドラマ「EDEN エデン」が、9月5日から公開される。監督の実兄スベンをモデルに、当時人気DJとして活躍した主人公ポールを演じる新鋭フェリックス・ド・ジブリが来日し、作品を語った。

 ミアとスベンが共同で脚本を執筆し、ダフト・パンク誕生の瞬間などシーンの軌跡をたどりながら、主人公の栄光と挫折を描く。大学生のポールは親友とDJデュオを結成し、瞬く間にシーンの中心へと躍り出る。若くして名声を得たポールだったが、私生活では金銭感覚を失い、ドラッグに溺れ、恋人との仲も安定しない。やがて、最先端のクラブミュージックの流行とポールの音楽性が少しずつかけ離れていく。エティンヌ・ポーリーヌ、バンサン・マケーニュ、グレタ・ガーウィグ、ローラ・スメットら旬の若手俳優陣が共演する。

 ハンセン=ラブ監督のパートナーだったオリビエ・アサイヤス監督の作品への出演がきっかけで、本作のオーディションを受け主役の座を射止めた。当時の音楽を聞き込み、スベンから話を聞いたり、数々の写真や資料を見せてもらい役作りに臨んだ。

 「当初のミアの構想は、出来上がった作品よりもだいぶ長い、壮大な物語になる予定でした。シナリオを読んで、その時間の変遷に興味がありましたし、最初のシナリオの密度が濃く感動しました。自分もエレクトロミュージックが好きだったので、この役を演じたかったのです」

 「ポールという人物よりはストーリーに感動しました。最初のシーンで、漫画家のシリルが静けさについて話します。そうして最後にサイレンスが出てくる。その間、ポールはとても華やかで、にぎやかな人生を送ります。けれど最終的に求めているのは静けさだったとわかるのです。そこに感動しました」

 90年代のフレンチタッチという音楽シーンについてこう語る。「今の音楽シーンのパイオニア的なものだったと思います。エレクトロミュージックはその前にもありましたが、そこにダフト・パンクの音楽など、新しい要素が加わってムーブメントになったと思うのです。以前はエレクトロ音楽に興味のある人はそれほど多くはなかったと思いますが、今日では世界的に多くの人が聞く音楽になっています。震源地から地震が広がるような感じだったのではないでしょうか」

 自身は1991年生まれ。仏屈指のエリート校パリ政治学院在学中に、アーティストのプロデュースやミュージッククリップ製作などを行う実業家としても活躍しており、ポール同様に若くして成功している。ポールの半生と共感できる部分はあったのだろうか。「ポールと僕は全く違うタイプ。DJ時代の彼は何かあっても、気にせずやり過ごしますが、僕は学生の頃から不安感を持っています。1点だけ共通点を見出すとすれば、僕もポールと同様に学生時代から文学に興味があること。大学に入ってからは、レーベル設立やパーティ開催などで忙しく、文学からは少し離れましたがそれでも書くことは好きです」

 俳優業に関しては、端役で1作出演後、22歳にして主演に抜てきされた。「たまたまです。良い作品にめぐり合えたから」と謙遜する。今後も俳優は続けるつもりだが、ほかの活動との両立を希望している。「自分で決めたというより、本当にチャンスがめぐってきたという気がします。人生では、待ちの姿勢でいてはいけないと思うのですが、やはり納得がいかないものには出ないと決めています」とこだわりを語った。

 「EDEN エデン」は、9月5日新宿シネマカリテほか全国順次公開。