本当は、誰かを呼びたかったのか。

 それとも、必要性を感じていないのか。

 9月3日、8日のW杯予選に臨むメンバーには、高さのあるストライカーがいない。

 ハンス・オフトのチームには、高木琢也がいた。自らが代表に招いたターゲットマンを、オランダ人の指揮官は重用した。

 フランスW杯のメンバーには、呂比須ワグナーがいた。ブラジルから帰化した彼は、空中戦を強みとするタイプではなかった。オールラウンドなFWである。それでも、ゴール前でDFとヘディングを競り合うことが、苦手なタイプではなかった。敵地に乗り込んだウズベキスタンとのW杯アジア最終予選では、呂比須をターゲットとしたパワープレーから同点弾が生まれた。

 日韓W杯の日本代表には、身長が180センチをこえるFWがふたりいた。西澤明訓と鈴木隆行である。指揮官フィリップ・トルシエは空中戦を主武器としなかったが、中山雅史を含めた3人を手元に置くことで、パワープレーへの備えとしていた。

 4年後のドイツでW杯に挑んだジーコは、巻誠一郎を連れて行った。184センチの高さをストロングポイントとする彼は、イビチャ・オシムのもとでも代表の前線を担った。

 2010年の南アフリカW杯で、チームに高さをもたらしたのは矢野貴章である。186センチの長身が相手ゴール前で生かされることはなかったものの、岡田武史監督は彼の「フィジカル、スピード、運動量」に着目して選んだと話している。フィジカルのなかには、もちろん「空中戦の強さ」が含まれていたはずだ。

 高さを担保しなかったのはザッケローニである。

ハーフナー・マイクや豊田陽平を起用しつつも、最終的には信頼を寄せなかった。空中戦というオプションには興味を見せず、センターバックの吉田麻也を前線であげることで対応した。

 ハリルホジッチ監督はどうだろう。

 9月の連戦に向けて選んだ6人のFWで、高さを武器にするタイプはいない。FW登録の本田圭佑は180センチを超えるサイズだが、彼のポジションは2列目だ。

 3日にホームで激突するカンボジアは、すでに2試合を消化している。シンガポールに0対4、アフガニスタンに0対1と敗れている。このグループではアウトサイダーだ。

 アフガニスタンは実力が未知数だが、予選開幕戦でシリアに0対6と大敗している。シンガポールとシリアを交えた5か国の争いで、カンボジアと4位を競うのがアフガニスタンの立場だろう。

 対戦相手との力関係を考えると、空中戦に活路を求める展開は想定しにくい。岡崎を軸としたFWの構成でも問題ないが、シンガポール戦のようなこともある。「空中戦」というオプションは、持っておいたほうがいいだろう。

ハリルホジッチ監督は、空中戦に強い選手の必要性を感じていないのか。

対戦相手の分析などを踏まえて、今回は招集を見送ったのか。
 
 それとも、コンディションなどの関係で呼びたい選手を呼べなかったのか。

 今回はともかく10月以降の戦いで、「高さ」というオプションが必要になってくるのは間違いないが。