予選はOKだったのに、なぜ本大会はNG?


 これは「運命」だったのか、それとも「不運」だったのか――。その出来事は高校野球100年のメモリアル大会となる第97回全国高校野球選手権大会の第2日(7日)第1試合で起こった。

 専大松戸(千葉)の右腕エース・原嵩が花巻東(岩手)戦で先発し、初回の立ち上がりから再三に渡って桑原和彦球審に二段モーションについての注意を受けたのである。

 試合後の原によれば「5〜6回言われました」という。夏の甲子園でも身長185センチの長身から最速148キロの直球を持ち味にスライダー、カーブ、フォーク、チェンジアップを操る本格派として注目を浴びていた右腕が注意を受けた序盤からリズムを崩し、自慢の制球も乱れて4回1/3を5四死球4安打4失点で途中降板。チームも2-4で敗れ、初戦で姿を消した。

「(注意を受けたことを敗戦の)言い訳にしたくない」と原は大勢の報道陣の前で多くを語ろうとしなかったというが、予選の県大会で一度も投球フォームについての注意は受けておらず、同じ投げ方なのにどうして甲子園ではNGとなったのかという疑問はどうしても拭い去れないだろう。

 ダンマリを決め込んでいたとはいえ、実はマウンドで本人も激しく動揺し、フォームが気になって仕方がなくなっていたのは想像に難くない。

 確かに原の左足は高く上げた後、降ろしていく段階で動きが一旦止まりかっているように見えなくもない。だが注意を受けた初回の投球フォームを録画映像でチェックしてみると、その左足は下がっていく時に非常にスローペースではありながらも動いていて完全に静止してはいないことが確認できた。投球動作の途中で動きを止めてしまうと野球規則で禁止されている二段モーションとなるが、個人的には原の投球フォームが抵触するか否かについてはかなり微妙なところだと思う。

アメリカでも、静かな話題に


 二段モーションを含め反則投球の判断は、その試合のジャッジを任された各球審の裁量によって決まる。高校野球連盟(高野連)の大会ルールも基本的にプロと同じ。だから各試合によって球審の判断が分かれる可能性は今後もある。

 しかしながらこれを「仕方がない」の一言で済ませ、このまま見過ごしてしまってしまってはいけない。やはり今回のケースのように県大会で特に問題視されなかったプレーが本大会になって「×」が出され、ジャッジの誤差が生じてしまうことには強い違和感を覚える。原の悲劇を繰り返さないためにも、これを機に各球審の判断が分かれないように「二段モーション」の判断基準をより明確化させ、さらに疑わしき投球フォームと見なした場合には本大会予選の早い段階から注意を促すなどして再発を防ぐべきである。高野連には、ぜひお願いをしたい。

 ちなみに原は高校3年生で各球団のスカウトたちが熱い視線を送る今年秋のドラフト上位指名候補だ。絶対の自信を持っていたはずの投球フォームが甲子園の大舞台で否定され、本領を発揮できずに敗れた精神的なショックは察して余りある。今後の進路はまだわからないが、無念さをバネに悲劇から立ち直って再び飛躍してほしい。

 最後に海の向こうでも、この?二段モーション騒動?が静かな話題を呼んだことを補足しておきたい。米スポーツ専門局ESPNも7日(日本時間8日)深夜に放送された番組『スポーツセンター』の中で日本の高校野球・夏の甲子園大会をホット・トピックスとして取り上げ、この専大松戸VS花巻東の一戦で起こった出来事を「不運」として報じ、次のように論じていた。

「彼(原)はストップモーション(二段モーション)としてボークを取られなかったが、注意を受けた。それは球審を含む審判団のせめてもの情けだったのかもしれない。しかし情けがあるならば、大会の取材者側(高野連)は予選の時点で注意するべきだっただろう。もしこれが五輪やサッカーのワールドカップで同じことが起これば、それこそ国際問題に発展するはずだ」――。