その時々の出来事にフォーカスし、論を交わす時事蹴論。今回はプレミアリーグで初陣を飾った日本代表FW岡崎慎司を取り上げる。賞賛を受けた背景とは? そして見え隠れした今後への課題とは......?



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▼プレミア向きの個性?
「岡崎慎司ならプレミアでもやってくれるかもしれない」

 そんな期待を込めて、岡崎が出場するレスター対サンダーランドの一戦を観るべく、テレビの前に座ったサッカーファンは多いのではないだろうか。かく言う筆者もそうだった。何故そう思ったのか。

 一つはプレースタイル。日本人選手がプレミアリーグでプレーする上での最大の壁はフィジカル面だ。ただ岡崎はオフ・ザ・ボールの質が高いため、相手の背後から飛び出して、接触プレーを避けながらワンタッチでゴールを決めることができる。人や空中戦には強いが、スペースのケアは苦手なDFが多いこの地において、岡崎はやっかいなストライカーになり得る。

 また、ハードワークを怠らない献身性や、最後触れるか触れないかの瀬戸際で頭から突っ込んで行ける勇気は、英国人が好むメンタリティーである。素早くチームに馴染み、ファンからの多くのサポートを受ける光景が容易に目に浮かんだ。

 結論を言うと、この日本代表FWは得点こそ奪えなかったものの、自身の存在価値を示した。英国人たちは驚いているはずだ。元アーセナルのFWであり、現在はスカイスポーツの解説者を務めるポール・マーソンの発言からも、そのことはよくわかる。

「岡崎は非常によかった。ヴァーディ、シュラップ、マフレズのようなスピードはないが、常にボールをおさめた。素晴らしいタッチやヴィジョンを持っている。とても印象的な選手で、別次元の選手だと私は思うね。背丈が大きい選手ではなく、むしろ小さい。けどいいプレーを見せた」

 正直、読んでいるこちらまでも気持ちよくなるくらいの大絶賛だ。

 レスターを指揮するクラウディオ・ラニエリ監督も「選手全員が頑張っていたから、あまり一人だけ言及したくはないが、岡崎は非常にいいプレーをみせた」と賞賛。スカイスポーツの採点では、得点を決めていないFWにもかかわらず、「7点」がつけられている。

▼ポジティブとネガティブ
 さて、具体的に岡崎の何が良かったのか。

 一つは守備でのハードワークだろう。[4-4-2]のシステム、正確にはFWが縦関係だったので[4-4-1-1]とも言えるシステムで、FWの相方ジェイミー・ヴァーディの後方でプレーした岡崎は常に走り続けた。サンダーランドDFへのプレスは言うまでもなく、MFへのプレスバックもきっちり行った。ヴァーディも運動量豊富なタイプのため、この二人のプレスがサンダーランドの組み立てを完全に無効化。特に岡崎のプレスはタイミングも非常によかったため、相手CBユネス・カブールとセバスティアン・コアテス、あるいは中盤の選手たちも完全に混乱していた。

 また攻撃のシーンでも、相手DFの視界から一度消えて、いきなり眼前に飛び出すプレーで、決定機に何度も顔を出した。得点こそ決められなかったが、得点の匂いは常にしていた。

 以上のように攻守共に貢献度が高かったからこそ、前述の大絶賛に繋がったのだ。非常に良いデビューだったと言えるだろう。

 しかしながら、あえていくつかの課題にも言及しておきたいと思う。

 おそらくではあるが、岡崎にとってプレミアのDFの対人能力は、想定を超えるものだったかもしれない。87分のプレーがそれを象徴している。レスターFWヌゴロ・カンテからのスルーパスに抜け出した岡崎は、ファーストタッチで相手DFカブールの逆をとり、左足でシュートを放った。しかし、このシュートはカブールにあっさりとブロックされてしまった。タックルやシュートブロックに関しては、プレミアの選手は非常に能力が高い。想定以上に足が伸びてくる。

 また、相手の危険なタックルにも気をつけなければならない。イングランドの選手たちは、ドイツの選手よりも荒い。時には足にタックルが飛んでくる。

 これに関しては昨シーズンまでチェルシーレディースに所属していた大儀見優季もこう語っている。

「ドイツではあまりないものなんですけど、イングランドではファウルでもタックルにくる。すごく危険なタックルが多いと思います。その危険なタックルにあわないボールコントロールや、ポジショニングを掴んでいかないと、シーズン通して怪我しないでプレーするのは難しいと感じます」

「最後触れるか触れないかの瀬戸際で頭から突っ込んで行ける勇気」というのは岡崎の特徴であり、武器でもある。しかし、この武器も場合に応じて引っ込めなければならない。これはもしかすると、岡崎にとって一つのジレンマになるのかもしれない。

 デビュー戦で岡崎は自身の能力の高さを示した。初戦でフル出場させてもらっていることを鑑みるとラニエリ監督からの信頼も厚そうだ。対戦相手に応じて、長身のアルゼンチン人FWレオナルド・ウジョアと2トップを組むかもしれないし、あるいはサイドハーフでの起用もあり得る。ベンチに座る日もあるだろう。今後どのような起用をされるかはまだわからないが、初戦を見る限りでは、大きな期待を寄せてもよさそうだ。

内藤 秀明(ないとう・ひであき)


英国在住中にFA Coaching License Level 1, 2, internationalを取得。英国的・コーチ的観点からプレミアリーグのゲームを分析する。また、現在は関西を中心に育成年代からJリーグまで幅広く取材活動を行っている。Twitterアカウントは @nikutohide