北海道新幹線公式ホームページより

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 今年3月に北陸新幹線が金沢駅まで延伸開業したとき、マスコミが一斉に北陸新幹線を取り上げ、金沢はにわかにブームが起きた。北陸新幹線の開業効果は落ち着きつつあるが、来年3月には北海道新幹線の新函館北斗駅まで延伸開業が予定されている。

 開業を目前に控えながら、北海道新幹線は盛り上がりを欠いている。なぜ、北海道新幹線はあまり盛り上がっていないのか?

時間短縮効果があまりない

北海道新幹線が盛り上がらない理由は、時間短縮効果があまりないが原因です。これでは東京から函館まで新幹線で行こうという人はいません」と話すのは、鉄道雑誌編集者。

 北陸新幹線の東京駅-金沢駅間は約2時間10分。これまで東京-金沢間を飛行機で移動する場合は、金沢市街地から離れた小松空港を使わなければならず、新幹線が開業したことで所要時間は一気に短縮。利便性は飛躍的に向上した。

 対して、北海道新幹線の新函館北斗駅はというと──東京駅から新函館北斗駅までは最速でも4時間10分。新函館北斗駅は函館駅と離れているため、そこまで移動するのに在来線などの乗り換え時間を考慮すると、5時間はみなくてはならないだろう。函館空港は函館駅から車で30分の距離にある。こうなると、東京から函館まで飛行機を使った方が便利といえる。

 飛行機に比べて、新幹線は途中駅からも乗車することも可能だから、埼玉県の大宮駅、宮城県の仙台駅、岩手県の盛岡駅から函館に行くために新幹線に乗るというユーザーもいるだろう。そうした需要を掘り起こすことができれば北海道新幹線も盛り上がるが、現状は厳しい。そうした背景から新幹線開業効果は限定的と見られてしまい、盛り上がりに欠ける一因となっている。

 さらに函館市は1990年代から国道沿いに大型量販店などが並ぶ典型的な郊外化都市になり、中心市街地の空洞化が進んでいる。表玄関となる函館駅周辺は市役所やホテルなどが立ち並んでいるが、新市街地へは自動車がないとアクセスすることは難しい。

 函館の街のつくりが北海道新幹線の新函館北斗駅まで延伸する期待感を薄めている要因になっている。ある函館市職員は言う。

「函館市民の足と言えば函館市電になりますが、旧市街地に路線が敷かれていて時代に合っていない。昔から函館空港への延伸や新市街地に新路線を建設する計画はありましたが、いっこうに進んでいません」

 行政がモタモタしているうちに、新幹線の方が先に来てしまった。このままでは、人の流れは新幹線駅のある北斗市に奪われてしまうだろう。異国情緒あふれる函館市は観光客からも高い人気を得ている。

 新幹線という黒船襲来は、長らく道南の拠点都市として発展してきた函館市の落日を加速させるのか、それともチャンス到来となるのか?

(取材・文/小川裕夫)