女性モテ車を解説する「週刊ポスト」連載の「死ぬまで カーマニア宣言!」。今回は、欧米では多く見かけるものの、日本ではあまり見かけない韓国車についてだ。これまでにクルマを40台買ってきたフリーライター・清水草一氏(53)が、なぜ日本では韓国車があまり売れなかったのかについて解説する。

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 日本では韓国車についてネガティブな報道が多く、ヒュンダイ車は雨漏りするとか、アメリカで燃費を水増し表示してバッシングされているとか、悪い話ばかり耳にするが、実際に乗るとあまりの差のなさに愕然とする。

「そうは言っても、ヒュンダイは日本でさっぱり売れなかったじゃないか!」

 確かにヒュンダイの乗用車は、2001年から2010年まで日本で販売されていたが、極度の販売不振が続いて撤退した。

 だが、当時売られていたソナタ、グレンジャー、i30も、デキは決して悪くなかった。なにしろヒュンダイは、グループとしてはいまや世界第5位。販売台数はホンダよりずっと上というほど巨大だ。傘下のキア(起亜)も含め、欧米でも売れまくっている。欧米で売れるクルマがそんなに粗悪なはずがなかろう。実力は相当なものだ。

 それほどのクルマが、なぜ日本で売れなかったのか?

 なによりも日本での価格設定が高すぎた。定価が日本車とほぼ同じ、値引きを加味すると少し高い。これでわざわざ韓国車を買う日本人などいない。スマホくらいなら韓国製品も買うが……。

 ヒュンダイ車は、海外では日本車より1割弱安いというのが定位置だ。品質もイメージもちょっと下だけどちょっと安い。昨今の円安でその価格競争力が怪しくなり、今はやや不振だが、あくまで「やや不振」程度なのである。

 近年の韓国車の武器は、デザインになっている。ヨーロッパ的な大胆かつ洗練されたスタイルは日本車より上。キアは元アウディのドイツ人凄腕デザイナー、ペーター・シュライアー氏をヘッドハンティングし、ついには社長に据えてしまった。氏はヒュンダイの最高デザイン責任者も兼任している。日本の会社では考えられない大胆な人事と言えよう。

 だが、韓国車には決定的な弱点がある。それは、自動車史に残る革新的な技術や超高性能車を何も生み出していないことである。たとえばトヨタのハイブリッドや燃料電池、日産のGT-RやEV、ホンダのF1での実績のような世界に誇れるNo.1は何もないので、その分ブランドイメージは低め。韓国車が美女に大人気という話は、世界中のどこでも聞かない。

 しかし、それもうかうかしていられない。得意のヘッドハンティングで、今後デカいことをやらかさないという保証はない。

■清水草一:編集者を経て、フリーライターに。「自動車を明るく楽しく論じる」がモットーの53歳。現在、フェラーリ・458イタリア、BMW・335iカブリオレ、トヨタ・アクアを所有。日本文藝家協会会員。

※週刊ポスト2015年8月7日号