1位が13位で2位が12位、3位は11位で4位は14位である。何と何の順位か、お分かりだろうか。

 第2節を終えたJ1の年間順位のチームの、走行距離の平均値である(データはすべて第2ステージ2節終了時)。

 第1ステージから19試合負けなしの浦和は、1試合あたりの走行距離の平均値がリーグで13位だ。浦和を勝点5差で追いかける広島は12位である。

 第1ステージ2位で年間順位3位のFC東京は13位で、同4位のガンバ大阪は14位となっている。年間順位5位の川崎Fは、走行距離の平均値が17位だ。

 年間順位と走行距離のいずれもが上位なのは、勝点27で6位の横浜FMだ。走行距離の平均値で4位に食い込んでいる。

 それでは、走行距離の平均値のトップ3の成績はどうだろう。

 1位の湘南は8位、2位の松本は16位、3位の仙台は10位である。J1復帰1年目で上位をうかがう湘南の健闘は眼を引くが、同じ昇格組の松本は苦戦している。仙台の成績にも、走行距離との関連性を見つけにくい。
 
 走行距離の平均値には、頑張る姿勢が透けて見える。フォワードのプレスバック、2列目のフォワードを追い越すランニング、チームとしての攻守の切り替えの速さなどが想像できる。ひたむきさが伝わってくる戦いで、清々しい気持ちを運んでくる。

 その一方で、「走ればいい」わけではない。誰が、いつ、どこで、どのように走るのかは重要だ。走行距離の平均値は高くないものの勝点を稼いでいるチームは、細部にこだわることで効率の良い走りかた、つまり理にかなった試合運びを実現していると考えることができる。

 経験豊富で思慮深い選手──たとえば川崎の中村憲剛は、ムダは走りがない。自分と周囲の選手の距離感、チーム全体のバランスなどを瞬時に計算し、ピッチ上で最適のポジションを取る。そのプレーは圧倒的なまでに効率が良く、走ることをサボっていると誤解されかねないくらいだ。

 ここから先は個人的な好みである。

 たくさん走るチームにたくさん勝点を稼いでほしいと、僕は思っている。

 走ることが報われてほしいというような、感傷的な気持からではない。対戦相手を走力で上回るのは、日本サッカーが目ざすべき方向性だと考えるからだ。

 ワールドカップでベスト8入りするには、4試合を戦い抜かなければならない。5試合目に勝ってベスト4に、6試合目に勝って決勝に進出できる。世界一になるのは、7試合目で勝ちきらなければならない。W杯優勝への道のりは、過酷な消耗戦だ。

 疲労感がまとわりつく連戦では、技術のネジが緩むこともあるだろう。判断のスピードが鈍ることもあるに違いない。日本の強みが輝きを失いそうな局面で、チームを支えるのは走力になる。的確なサポートを積み重ねることで、ミスをカバーできる。

 走行距離やスプリントの回数が問われるのは、もはや世界的な潮流だ。日本人よりフィジカルに優れる選手が多く、日常的にタフな経験を積んでいる欧州の国々に、技術と組織力で対抗するのは現実的でない。走れる選手、走れるチームが増えている。それだけに、技術と組織力を走力で磨き上げることで、日本は世界に対抗していかなければならない。

 走行距離の平均値が高いチームには、試合で有効な技術と走力を身に付け、リーグ戦で上位に躍り出てほしい。走れるチームが結果を残し、走ることの価値観が高まっていくことで、日本サッカーの成長速度は上がっていく。