[ちちんぷいぷい - 毎日放送] 2015年7月8日放送で、「企業城下町の今」について取り上げていました。

企業城下町とは、ある会社や下請け子会社などが産業の大部分を占めているような町。トヨタ自動車のある愛知県の豊田市や、日立製作所のある茨城県日立市などが有名です。さらに関西で有名な企業城下町といえば、パナソニックのある大阪府守口市と門真市です。


門真市のパナソニック本社(Pokarinさん撮影、Wikimedia Commonsより)

パナソニック(当時松下電気器具製作所)は1933年に大阪市福島区から門真市に移転し、1955年には三種の神器(洗濯機・冷蔵庫・白黒テレビ)の家電ブームで門真工場は拡大。当然、門真市の財政もパナソニックに支えられてきました。1980年代後半から90年にかけて法人市民税は70億円強で、地方交付税を受けない数少ない「不交付団体」だった時期もありました。

ですが現在では15億円以下にまで減収し、中小企業の数もバブルの頃の半分に減っています。そして今も残る中小企業ではパナソニックから"親離れ"しようとがんばっているのです。

内向きから外向きへ、パナソニックからの親離れの改革

京阪西三荘と門真市の間、パナソニック本社に近い門真銀座商店街は、今では人通りも少なくシャッターが閉まった店が目立ちます。そして松下のモノづくりを支えてきた、守口・門真の多くの中小下請け企業もバブル崩壊以降、その業績不振とともに廃業・倒産が相次ぎました。

そんななか、生き残りをかけ"親離れ"をしようとしているのが、守口市の三郷金属工業です。主に家電製品などに使われるリチウム電池に接続端子を取り付ける特殊な溶接を得意とする会社です。2016年で創業70年、1946年にもともと松下の関連会社にいた祖父が独立して創立し、以後松下電器の下請けとして共に発展してきました。これまではほぼ100%がパナソニックからの仕事でした。

ですが、パナソニックの業績悪化により売上げも減ってきたことにより、他社への営業に踏み切ることにしたのですが、これまで松下からの仕事に頼り切ってきた会社に「営業」という部署はありませんでした。そこで営業経験者を新規に採用し、専属スタッフも配置して新たに「営業部」を設置したのです。

そして、親離れをきっかけに新しく"玄関"も作りました。訪れた人を驚かせるために、金属加工という硬いイメージとは全く違う純和風のたたずまいに。中はまるで旅館のロビーを思わせるこだわりよう。オシャレなプレゼンルームも設けています。

さらに、パナソニックの仕事だけをしていた時には必要のなかったホームページを立ち上げ、これまで内向きだった自社の高い技術を外に向けてアピール。立ち上げてすぐに、家電以外のメーカーから、精密部品の溶接といった思いもよらぬ仕事も舞い込みました。今では問い合わせは100件以上あり、新規開拓の大きな柱になっています。

今は、「企業城下町で培った技術で世の中に打って出る時代」だと、三郷金属工業の児島社長は語ります。(ライター:ツカダ)