安倍晋三政権は、戦後日本の国の在り方を根本的に転換する戦争法案について、今週中にも衆院安保法制特別委員会で採決を強行しようとしています。法案は自衛隊が海外で武力行使に乗り出すさまざまな仕掛けを盛り込んでおり、憲法9条に真っ向から違反することは明白です。戦後初めて自衛隊員が海外の戦場で「殺し、殺される」ことになる違憲の法案は廃案にする以外ありません。

イラク派兵の比でない

 自衛隊員が「殺し、殺される」―。この言葉が初めて問題になったのは2003年でした。

 自衛隊をイラクに派兵するイラク特別措置法を審議していた国会で、小泉純一郎首相(当時)が「(イラクで自衛隊員が)殺される可能性はないといえば、それは言えない、あるかもしれない」「たたかって相手を殺す場合がないかといえば、これもないとは言えない」(同年7月9日、参院外交防衛、内閣委員会連合審査会)と述べ、「殺し、殺される」可能性に言及したことが大きな問題になりました。

 実際、自衛隊はイラク・サマワに派兵される前、武器の使用が隊員らの生命・身体を防衛するために限られているのに、敵に損害を与える「制圧射撃」の訓練を行いました。派兵後は、宿営地がロケット弾などによる攻撃を繰り返し受け、死傷者を出す危険にさらされました。部隊の移動中に群衆に取り囲まれ、イラク人を殺傷する寸前の状況にまで至ったこともありました。

 こうした実態は、日本共産党の穀田恵二議員が衆院安保法制特別委員会(10日)で示した自衛隊内部文書に生々しく描かれています。

 それでもこの時、問題になっていたのは、自衛隊が「非戦闘地域」で行う「復興支援活動」でした。

 ところが、戦争法案は、イラク特措法などでは活動が禁止されていた「戦闘地域」でも自衛隊が弾薬の補給や武器の輸送などの兵站(へいたん)を行うことを可能にします。相手の攻撃対象になるのは不可避であり、攻撃を受ければ応戦し、戦闘に発展するのは明らかです。

 法案はまた、形式的に「停戦合意」があれば、依然として戦乱状態が続く地域に自衛隊を派兵し、治安活動を行うことを可能にし、任務遂行のための武器使用もできるようになります。さらに、日本の「存立危機」を口実にすれば、米国が海外で始める戦争に公然と参戦し、自衛隊が米軍と一体となって戦闘に乗り出すことも可能になります。

 自衛隊員が「殺し、殺される」危険は、イラク派兵の比ではありません。他国の国民を殺すことになれば、日本国民が憎悪の対象にもなります。

無責任極まりない態度

 安倍首相は自民党のインターネット番組(8日)で、戦争法案によって「国民や自衛隊員のリスク(危険)は下がる」と強弁しました。イラク派兵で自衛隊員が「殺し、殺されるかもしれない」と、こともなげに述べた小泉首相の態度は当時、強く批判されましたが、自衛隊員のリスクは上がるどころか下がると言ってのける安倍首相の態度はそれ以上に無責任極まりないものです。そうした首相の下で戦争法案が強行されれば自衛隊の海外派兵は一層際限がなくなります。法案を強行することは絶対に許されません。