年収300万円も1000万円も趣味の割合は大きく変わらないという結果に。どの層でも映画、音楽、美術鑑賞のレジャーを楽しむ人がもっとも多かった。最近では、栽培した作物を食べられてコスパが高い家庭菜園も人気だ。

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マンションより一戸建て。軽自動車よりSUV。洋服を買うならファストファッションよりデパートで……。高年収世帯が冒しがちなムダ遣い、見栄消費を総点検。本当に満足度の高いお金の使い方、教えます。

景気が回復傾向と耳にして気持ちが前向きになると、どこかへ遊びに出かけたくなるもの。

新生銀行の「2014年サラリーマンお小遣い調査」によれば、男性会社員で「この1年間、お小遣いのなかでお金と時間をかけるものが増えたもの」のトップは、旅行・アウトドア(28.2%)。レジャーへの関心が高まっているといえるだろう。

しかし総務省の家計調査によれば、1世帯あたりのレジャー年間平均支出(宿泊料+パック旅行費+入場・観覧・ゲーム代)は約10万円。家族で国内旅行をすれば、一発で吹き飛んでしまいそうな金額で、決して贅沢をしているようには思えない。旅行ジャーナリストの村田和子さんはこの状況に、「レジャー、おもに旅の分野で、必ずしも高ければいいというわけではないという風潮の高まり」を感じるという。

「近年、ネットの普及によって、旅に対する価値観が変わってきました。旅先の発見や穴場をSNSやブログで伝える楽しみが生まれたことで、誰もが知っているところに行くより、“自分だけの旅”が人気になっています。旅行会社側からのお仕着せの旅を購入するのは過去のこととなり、現在は、消費者自らがネットで行き先や宿泊先もあれこれ選んで旅をするようになりました。値段以上に、自分の欲求とのマッチングが重視されている気がします」

たとえ格安のレジャーでも、自分なりの面白さが見出せれば、恥ずかしがる必要はない。そこで村田さんに廉価でも楽しめるレジャーを教えてもらった。

まず、ひとつは企業のミュージアムや、公共の博物館や美術館の見学。特に夏休みは、企業が社会貢献事業として、自然を学ぶ旅を開催したり、各種見学会やイベントが実施される機会が多い。

「“どこに行くか”ではなく、“何をするか”に注目してみてください。近場でも楽しいレジャーはたくさん見つかると思います。子どもの記憶にも残るはずです」

近場でさらに利用したいのが、各地で活躍するボランティアガイドだ。日本観光振興協会によれば、全国にあるボランティアガイド組織は1700以上もある。いつでも行ける地元は、たとえ名所があったとしても意外と足を運んでいないもの。そこで、ボランティアガイドを無料か安い料金で手配し地元を案内してもらうと、近辺の歴史を学ぶことができて再発見することも多く、楽しむことができるだろう。

村田さんはこうした割安のレジャーを堪能したら、それを成功体験として、もう少しお金をかけるレジャーへとステップアップしてほしいと語る。

「旅やレジャーは一時の消費として考えると高いかもしれません。でも出かける前の計画するワクワクや、終わった後のリフレッシュ感は何物にも代えがたいし、出かけるために仕事をテキパキこなしたりと、日常にもたらすメリットは少なくありません。単に安いことばかりにこだわるのではなく、価値を感じるところにはしっかりとお金をかけていく。そうすれば、自然と満足度も高くなるのではないでしょうか」

■隣の出費診断!
[A家]ディズニーランド vs [B家]登山 vs [C家]家庭菜園

[A家]年間訪問回数200回! 収入の半分を費やす

……夫50歳/妻42歳/長女12歳/長男10歳/次男5歳/年収800万円

ディズニーランド歴は20年に及び、行く頻度は驚異の年間200回弱! 年間パスポート(2パーク共通8万2000円)を使い、通園も定期券(20万円)を購入。家族揃って行くことも多いため、イベントが重なるときはグッズ代や食事代で年間100万円弱はかかる。「計算したことはありませんが、収入の半分はディズニーに費やしてる感覚です」。頻繁に通っていると同じ趣味の友達も増え、1日平均2万歩ほど歩くから家族ともども健康という利点も。「園内を歩いているだけで幸せ。デメリットは何もないです」と考えているので、今後もディズニー漬け生活は続きそうだ。

[B家]家族でのテント泊は一体感がたまらない

……夫38歳/妻37歳/長女10歳/長男6歳/年収750万円

学生の頃から登山が趣味で、かつては年間20回ほど行っていた時期も。現在は年4〜5回程度に抑えている。自分の友人&上の子2人と行くパターンが多く、1回につき交通費は1万〜2万円程度。友人と車をシェアして行くため割安感がある。登山靴、テントなどの備品はたびたび買い替える必要があり、年間10万円弱の支出。山小屋に泊まると数万円かかるところを、テントで安くあげているが、節約目的というより、テントのほうが一体感があって楽しいから。もう少しお金があれば、飛行機で北海道や九州、外国の山に行ったり、登山前にリッチなホテルに泊まりたい。

[C家]休日は、お弁当をもってお出かけで0円支出

……夫32歳/妻33歳/長男2歳/年収900万円(妻700万円)

同居の親がいつの間にか市民農園に申し込んで当たったことから家庭菜園をスタート。2年契約の農園代は年間に換算すると9000円で、肥料代・苗代・支柱代は1万円ほど。トマト、ジャガイモ、ナス、ゴーヤ、バジルなどを栽培し、収穫した野菜は全部食べるので、かけたお金は全額回収している感覚だ。さらにお金をかける気持ちは今のところない。面積15平方メートルの農園は家から徒歩5分の距離で、週末に水やりや草取りに向かう。子どもも砂場感覚で泥遊びすることもあり、今や家族のレジャーの中心だ。それ以外のレジャーも、弁当、水筒持参で公園や動物園へ出かけるなど、浪費はしない。

■FP山口京子さんの結論●子どものいる家庭はケチりすぎも禁物です

どのご家庭も、家族で思い出づくりできるようなレジャーで素敵ですね。こういう経験に基づいた記憶は大人になっても古びないものです。特にAさんは、お子さんも喜んでいるはず。でも収入の半分は使いすぎかも。元気に仕事をしているうちはいいのですが、退職後もこのペースのまま通えるかどうか考えてみましょう。ガマンするというより、20、30年後も大好きなミッキーに会おうという考えに変え、通うペースや使う費用を若干抑えて貯金に回してもいいかもしれません。

Bさんのレジャー費は年収からして適切ですね。ただし、アウトドア系の趣味は釣りやモトクロスなど、趣味がどんどん広がって支出が増えていくことがあるから、どこかで線引きしてもよいかもしれません。

Cさんは使わなすぎ……。子どもの感性を育む投資として、お金をかけるのはいいことなので、他のレジャーもある程度楽しみましょう。あと市民農園は期限があります。“畑ロス”にならないよう、早めに次の趣味を見つけておきましょう。

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ファイナンシャルプランナー 山口京子(やまぐち・きょうこ)
名古屋市生まれ。フリーアナウンサーから上京を機にFPに転身。テレビ、ラジオ、雑誌などで活躍。著書に『5ステップで貯まらん人を脱出 FP山口京子式 家計簿いらずの貯まるお財布メソッド』『「そろそろお金のこと真剣に考えなきゃ」と思ったら読む本』など。

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(鈴木 工=文・構成 向井 渉=撮影)