2015年06月15日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)


ジャック・ドーシー

2015年第1四半期のMAU(月間アクティブユーザー数)は3億200万人だが、これは2014年第4四半期から4.86%の伸びにとどまり、市場からは停滞感を指摘されている。さらに売上はアナリストの予想を2000万ドル下回る4億3600万ドルとなり、これも市場の期待を裏切った。

この結果を受けて、4年にわたってTwitterのCEOを務めていたディック・コストロが解任されることになった。Twitterのトップ更迭はもはや慣れっこといえるが、この結果、次なるCEOは再びジャック・ドーシーが選ばれた。

僕が思うに、2015年のTwitterは、非常に中途半端な立ち位置にいる。まず、かつてのライバルと目されたFacebookとは、ソーシャルネットワークという立ち位置においては圧倒的な差をつけられている。実名制のFacebookは、若者の支持を失いつつも社会インフラとして社会認知された。逆に匿名制のTwitterは、有用な情報交換の場となってはいるが信ぴょう性が判別しづらく、非常にノイジーな空間になっている。さらに短文で自分のステータスを公開するという意味では、スマートフォンの普及により人々はテキストではなく画像や短い動画で行うようになり、Instagramにその座を完全に奪われている。

では全社会向けには匿名だが、友人向けには実名を明かして、クローズドなコミュニケーションのプラットフォームになろうとしても、そこにはWhatsAppがあり、日本にもLINEがある。そしてFacebookはそもそも実名だから大人向けのメッセージングツールとして、急速にその勢力を伸ばしつつある。TwitterはDM機能から140文字制限をなくす方針を発表したが、もはや彼らに挽回のチャンスはないだろう。

Twitterはロングフォームのブログ全盛時代に登場し、真逆のショートフォーム(140文字)、しかも原則テキストだけのアップというシンプルかつ強力な制約条件を利して、一気にポピュラーになったが、いまでは最低限の情報のアップロードツールとしては画像や短い動画、スタンプなど140文字よりも簡単で時間を取らないメソッドが普及してきており、強みを生かせなくなった。いや、生かせないばかりか、なにをやるにも中途半端になっているのである。

市場はジャック・ドーシーの復帰をとても好意的に受け止めているが、僕はドーシーにとってはあまりいいことではない気がしている。Twitterの復活はそれだけ難しいからだ。Twitterは、Facebookが外部のInstagramやWhatsAppを買うことで新たな成長エンジンを得たように、M&A戦略に出るほかないと思う。噂されるFlipboardがよいのかどうかは判断しづらいが、自社の基本ビジネスモデルが時代に合わなくなっている以上、成長エンジンをほかから買ってくるほうがよいだろう。もしくは、みずから身売りをするしかないのではないか。

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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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